新規事業の種は「面倒くさい」にある。顧客の困りごとを事業へ変える3つの質問

新規事業の種は「面倒くさい」にある。顧客の困りごとを事業へ変える3つの質問
新規事業の種は「面倒くさい」にある。顧客の困りごとを事業へ変える3つの質問

新規事業というと、誰も見たことのない斬新なアイデアを思い浮かべがちです。

3つ
顧客課題を探す質問
約10年前
教育への投資経験
90日
実践ロードマップ

note原文公開:2026-10-26 / 転載・編集:2026-11-03
note原文を読む

この記事でわかること
  • 新規事業は、未来より目の前を探す
  • 第一の質問は「誰が困っているのか」
  • 第二の質問は「いま、どう対処しているのか」

〖記事概要〗

新規事業というと、誰も見たことのない斬新なアイデアを思い浮かべがちです。しかし本当に価値のある種は、顧客や現場が毎日、毎週、仕方なく繰り返している「面倒くさい」の中にあります。誰が困っているのか、いまどう対処しているのか、解決にお金を払うのか。この3つの質問から、生成AI時代の小さな改善を事業へ育てる方法を整理します。

〖本文〗

新規事業は、未来より目の前を探す

新規事業の会議では、つい「何か新しいものを作ろう」と考えます。

新規事業の会議では、つい「何か新しいものを作ろう」と考えます。けれども、白紙から奇抜な発想を生み出そうとすると、議論は抽象的になり、誰のための事業かが見えなくなります。私はまず、目の前で繰り返されている面倒な作業を探す方が近道だと考えています。

毎朝のメール確認、複数の表からの転記、経理の照合、顧客への定型連絡、進捗確認。慣れてしまうと不便であることさえ忘れます。しかし、その「仕方なく続けていること」には、時間、残業、外注費、ミス、機会損失が隠れています。面倒は、まだ言語化されていない顧客課題です。

第一の質問は「誰が困っているのか」

課題を見つけたら、困っている人を具体的にします。

課題を見つけたら、困っている人を具体的にします。社長なのか、営業なのか、経理なのか、管理職なのか、現場なのか、それとも顧客なのか。同じ作業でも、立場によって不便の意味は異なります。担当者は入力が大変でも、経営者は判断が遅れることに困っているかもしれません。

「会社が困っている」のように主語を大きくしないことが重要です。実際に困っている人へ会い、いつ、どの作業で、何が起きるのかを聞きます。観察できる事実まで落とせれば、生成AIへ相談するときも、必要なデータや機能を具体化できます。

第二の質問は「いま、どう対処しているのか」

人を増やす、Excelで頑張る、残業する、外注する、あるいは諦める。

人を増やす、Excelで頑張る、残業する、外注する、あるいは諦める。現場は不便を放置しているように見えても、必ず何らかの対処をしています。その対処方法こそ、現在払っているコストと、変えにくい理由を教えてくれます。

特に見落としやすいのが「諦める」という対処です。営業機会を追えない、問い合わせへ十分答えられない、データはあるのに分析できない。支出が見えないため無料に見えますが、実際には売上や学習の機会を失っています。新規事業では、この見えない損失まで捉える必要があります。

第三の質問は「解決にお金を払うのか」

困っていることと、お金を払ってでも解決したいことは同じではありません。

困っていることと、お金を払ってでも解決したいことは同じではありません。ここが改善活動と事業の分岐点です。顧客が予算を持つのか、社内投資として承認されるのか、いくらなら現在の対処より合理的なのかを確かめます。

私たちも約10年前、教育の課題を解決するためにeラーニングへ投資しました。当時は成果が保証されていたわけではありません。それでも、継続して提供できる仕組みを資産として残すには、補助金も活用しながら覚悟を決める必要がありました。課題への確信と投資判断が、事業を形にします。

生成AIで「小さすぎた面倒」が事業になる

以前は、個別企業の小さな作業を自動化しても、開発費が高く採算が合いませんでした。

以前は、個別企業の小さな作業を自動化しても、開発費が高く採算が合いませんでした。いまは生成AIを使い、データ整理、文章生成、分類、通知、ダッシュボード作成を低いコストで試せます。大規模システムにする前に、自分たちの仕事を少し楽にする道具として検証できます。

ただし、AIを入れること自体を事業にしてはいけません。顧客が買うのはAIではなく、短くなった待ち時間、減ったミス、早くなった判断、取り戻せた売上です。技術名ではなく、面倒がどのように解消されるかを説明してください。

ダッシュボードは判断を助ける

あちらの表、こちらのデータ、先週の数字、先月の数字を人が見比べるのは大変です。

あちらの表、こちらのデータ、先週の数字、先月の数字を人が見比べるのは大変です。そこで複数の情報をまとめ、変化を見える形にするダッシュボードが役立ちます。一覧とグラフがあれば、昨日との違いを見つけ、今週の行動を決めやすくなります。

大切なのは、見栄えのよい画面を作ることではありません。誰が、何を判断するために見るのかを決めることです。使われない指標を増やさず、判断後の行動まで設計します。データを集めるだけでなく、意思決定を前へ進めるところまでが事業価値です。

現場で実行するための三つの原則

取り組みの目的を「顧客の困りごとを事業機会へ変える」と置き、誰のどんな状態を変えるのかを一文で定義します。

第一に、目的と対象者を一文で決める

取り組みの目的を「顧客の困りごとを事業機会へ変える」と置き、誰のどんな状態を変えるのかを一文で定義します。

取り組みの目的を「顧客の困りごとを事業機会へ変える」と置き、誰のどんな状態を変えるのかを一文で定義します。生成AIを使う、研修を行う、システムを作るという手段を目的にしないことが重要です。目的が具体的なら、必要なデータ、関係者、期限、確認方法を選びやすくなります。

目的は経営だけで決めず、現場の言葉で確認します。会議室では正しく見えた課題も、実際の作業を見ると例外や制約が見つかります。利用者へ「何が一番困るか」「どこで手戻りが起きるか」と聞き、観察できる事実へ直します。

第二に、小さく試して事実を残す

最初から全社展開せず、失敗しても業務全体を止めない範囲で試します。

最初から全社展開せず、失敗しても業務全体を止めない範囲で試します。時間、品質、手戻り、確認負担、利用者の反応を記録します。成功例だけでなく、使えなかった条件や誤りも残してください。失敗を隠すと、別の部署が同じ失敗を繰り返します。

生成AIにはハルシネーションがあります。もっともらしい誤りを出す可能性があるため、出力を正解として受け取らず、出典、数字、権利、機密、相手の文脈を確認します。影響の大きい判断は人が承認し、AIと人の役割を明確にします。

第三に、学びを仕組みへ戻す

一人の工夫で終わらせず、手順、研修、権限、評価制度へ反映します。

一人の工夫で終わらせず、手順、研修、権限、評価制度へ反映します。誰が実行し、誰が確認し、問題が起きたら誰へ相談するかを決めます。再利用できる形へ変えることで、経験は組織の資産になります。

挑戦を求めながら、評価が短期の数字と失敗の少なさだけなら、人は従来業務を選びます。仮説を立てた、早く相談した、問題を共有した、次の人が使える記録を残したという学習行動も評価してください。

90日で始める実践ロードマップ

対象業務を一つ選び、現在の時間、品質、コスト、手戻り、不安を記録します。

最初の30日:現状と基準値を知る

対象業務を一つ選び、現在の時間、品質、コスト、手戻り、不安を記録します。

対象業務を一つ選び、現在の時間、品質、コスト、手戻り、不安を記録します。数字だけでなく、現場担当者と顧客へ短いインタビューを行い、どの判断に迷うのか、どんな例外があるのかを言葉にします。

次の30日:代替案を小さく試す

既存ツールの使い方を変える、生成AIで下書きを作る、チェックリストを整えるなど、低いリスクの案から試します。

既存ツールの使い方を変える、生成AIで下書きを作る、チェックリストを整えるなど、低いリスクの案から試します。技術の新しさではなく、目的との適合、確認負担、安全性を比較します。

最後の30日:続ける条件を決める

継続、修正、中止の条件を決めます。

継続、修正、中止の条件を決めます。成果が出た理由だけでなく、データ不足、責任者の曖昧さ、現場理解の不足など、うまくいかなかった条件も共有します。運用責任者と次の見直し日を決めてから広げます。

AI時代に必要なのは、技術とマインドセットの両方

ツールの操作だけ学んでも、仕事の目的や責任が変わらなければ成果は続きません。

ツールの操作だけ学んでも、仕事の目的や責任が変わらなければ成果は続きません。問いを立てる、試す、確かめる、説明する、次の人へ渡す。その一連の行動を育てることが、AI時代の人材育成・教育支援です。

スキルセットの更新と同時に、自分の前提を見直すマインドシフトが必要です。AIに任せる仕事、人が担う判断、顧客へ提供する価値を考え直す。その積み重ねがマインド・トランスフォーメーションにつながります。

人や組織の前提を更新するときの参考として、私の著書『マインド・トランスフォーメーション AI時代の思考革命』も、必要に応じて手に取っていただければと思います。

明日から始める小さな一歩

大きな構想が完成するまで待つ必要はありません。

大きな構想が完成するまで待つ必要はありません。困りごとを一つ聞く、経験を一つ言語化する、AIへ任せる範囲を一つ決める、確認者を一人決める。目的と責任が明確な小さな一歩は、次の改善と対話を生みます。

技術の進化を眺める側ではなく、現場の価値へ変える側へ進んでください。読者の皆さんの職場で、今日いちばん小さく始められる行動は何でしょうか。

〖重要なキーワード解説〗

顧客課題

顧客や現場が達成したいことを妨げている具体的な不便、損失、制約です。

顧客や現場が達成したいことを妨げている具体的な不便、損失、制約です。

機会損失

対応できなかったために得られなかった売上、学習、顧客接点などの見えにくい損失です。

対応できなかったために得られなかった売上、学習、顧客接点などの見えにくい損失です。

支払意思

課題を解決するために顧客や組織が費用を負担する意思と、その条件です。

課題を解決するために顧客や組織が費用を負担する意思と、その条件です。

ダッシュボード

複数のデータを集約し、変化や判断材料を一覧・図表で確認できる仕組みです。

複数のデータを集約し、変化や判断材料を一覧・図表で確認できる仕組みです。

〖著者紹介〗

こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ 近森満です。

■株式会社サートプロ 代表取締役CEO

■所属・役職

・IoT検定制度委員会 事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)

・一般社団法人 IT職業能力支援機構 理事長(Android資格)

・電気・電子系技術者育成協議会 副理事長(E検定)

・組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会 メンバー(組込み)

・ET教育フォーラム合同会社 代表(コンテンツ制作)

・経済産業省 地方版IoT推進ラボ ビジネス創出事業メンター(IoT支援)

・経済産業省 地域DX推進ラボ ビジネス創出事業メンター(DX支援)

・デジタル庁 デジタル推進委員(デジタル化支援)

・DX事業共同組合 設立理事(DX推進)

・一般社団法人日本サステナブルビジネス機構 幹事(SDGs認証)

・”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会 理事(DEI支援)

・アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)

・一般社団法人国際サイバーセキュリティ協会 事務局長(IACS認定)

AI導入や人材育成を自社の課題に合わせて進めたい方は、DX・AI人材育成のご相談もご覧ください。

〖音声配信〗

2年先の未来を先取り。AI・DX・超知性ASI時代のデジタル戦略を読み解くPodcast「DX企画書のネタ帳」。未来を先取りする実践的なヒントを毎日お届けしています。

今回の音声配信はSpotifyで聴くことができます。

#新規事業 #事業開発 #顧客課題 #生成AI #DX推進 #業務改善 #ビジネスモデル #データ活用 #AIエージェント #マインドトランスフォーメーション

よくあるご質問

「新規事業は、未来より目の前を探す」で押さえる点は?

新規事業の会議では、つい「何か新しいものを作ろう」と考えます。

「第一の質問は「誰が困っているのか」」で押さえる点は?

課題を見つけたら、困っている人を具体的にします。

「第二の質問は「いま、どう対処しているのか」」で押さえる点は?

人を増やす、Excelで頑張る、残業する、外注する、あるいは諦める。

「第三の質問は「解決にお金を払うのか」」で押さえる点は?

困っていることと、お金を払ってでも解決したいことは同じではありません。

「生成AIで「小さすぎた面倒」が事業になる」で押さえる点は?

以前は、個別企業の小さな作業を自動化しても、開発費が高く採算が合いませんでした。

学びを現場の実践へ

自社の課題に合わせたDX・AI活用、人材育成についてご相談ください。

お問い合わせ

この記事の次に読む・学ぶ

あわせて読みたい

自社に合う研修・人材育成について相談する

気に入ったらシェアしてください!
  • URLをコピーしました!