支援者の未来は
「教える人」から「一緒に答えをつくる人」へ
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90分
しゃべり倒した講演
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90日
実践ロードマップ
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30人
懇親会の支援者
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✍️ 近森 満(株式会社サートプロ CEO)
#中小企業診断士
#支援者
#生成AI
#人材育成
・企業内診断士と独立支援者が交わる意味
・答えを持っているふりをしない「壁打ち」の価値
・DX推進と人材育成への具体的な持ち帰り方
・90日で始める実践ロードマップ
| 190分をしゃべり倒して、質問時間がなくなった |
| 2事例:懇親会が即席の相談コーナーになった |
| 3企業内診断士と独立支援者が交わる意味 |
| 4事例:半導体の未来を、その場で一緒に考えた |
| 5最新技術は仕事だけでなく、趣味にも入ってくる |
| 6DX推進と人材育成へどう持ち帰るか |
| 790日で始める実践ロードマップ |
| 8AI時代に守るべき判断と信頼 |
90分をしゃべり倒して、質問時間がなくなった
DXやAIの論点は、きれいな正解を一つ提示すれば終わるものではありません。支援先の温度や経営者の関心、現場の抵抗によって答えが変わります。
こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ、近森満です。大田区で、中小企業診断士やITコーディネータ、企業内で支援業務を担う方々へDX、AX、MXについてお話しする機会をいただきました。質疑応答を含めて90分だったのですが、気づけばきっちり90分しゃべり倒していました。質問を一ついただいた時点ですでに時間超過です。いつもの時間管理の甘さと言えばそれまでですが、伝えたいことを百ページ近い資料へ詰め込んだ結果でもあります。
講演では、自分の経歴を長く話すより、支援者の皆さんが現場で使える問いを残したいと考えました。DXがPoCで止まる理由、日本では生成AIの効果実感が低く見える理由、技術導入と経営変革が離れてしまう理由。こうした論点は、きれいな正解を一つ提示すれば終わるものではありません。支援先の温度、経営者の関心、現場の抵抗、会社の意思決定によって答えが変わるからです。
事例:懇親会が即席の相談コーナーになった
講師が答えを渡す関係でなく、支援者同士が現場の抵抗や可能性を持ち寄り、互いの経験で問いを深める場が生まれました。まだ温まっていない現場が難所です。
講演後の懇親会には三十人ほどが参加しました。私はお酒を飲まないので、色だけはそれらしい烏龍茶を手にして、まず料理を食べようと思っていました。ところが挨拶と質問が続き、隣の空いた席へ移動したら、そこが即席の相談コーナーになりました。気づいた時には夜十時。店の片づけが始まり、最後に慌てて食事を口にするという、なんとも私らしい結末です。
ここで起きたのは、講師が受講者へ答えを渡す関係ではありません。支援者同士が、自分の現場で起きている抵抗や可能性を持ち寄り、互いの経験で問いを深める場でした。生成AIを提案しても、支援先が「自分には関係ない」「会社がどう考えているかわからない」と反応することがあります。私が普段会うのは、すでにAIをやりたいという比較的ホットな顧客です。一方、診断士の方々は、まだ温まっていない現場へ選択肢としてAIを持ち込む。その難しさは大きく異なります。
企業内診断士と独立支援者が交わる意味
大切なのは専門家の人数より、専門性が交差する設計です。支援者のキャリアパスは、一人で全部を知る方向でなく、必要な知を組み合わせる方向へ進みます。
中小企業診断士は独立して活動する人だけではありません。企業に勤めながら資格を生かす企業内診断士も多く、会場にはメーカー、ITベンダー、パソコン、サイバーセキュリティなど多様な背景の方がいました。同じ会社に百人を超える診断士がいるという話もあり、私は素直に驚きました。資格を個人の証明で終わらせず、社内の変革者ネットワークとして使える可能性があります。
大切なのは、専門家の人数よりも、専門性が交差する設計です。経営に強い人、技術に強い人、現場運用に強い人、対話に強い人。生成AIは情報整理を助けますが、現場の抵抗や期待を読み、別の専門家へつなぎ、実行可能な提案に変えるのは人の仕事です。支援者のキャリアパスは、一人ですべてを知る方向ではなく、必要な知を組み合わせる方向へ進むでしょう。
事例:半導体の未来を、その場で一緒に考えた
支援者の信頼は、即答の速さより検証の誠実さから生まれます。わからないものはわからないと言い、仮説を置き、必要なデータや専門家を探します。
半導体分野の方とは、AI利用が増えた時に物理的な計算資源が足りなくなるのではないか、という話になりました。その場に唯一の正解はありません。私も製造業出身で、半導体製造装置やウェハー関連の現場に接点がありました。相手の未来予測に私の経験を重ね、私はこう考える、相手は別の角度からこう考える、と会話を進めました。これこそ壁打ちです。相手を壁にするのではなく、互いに考えを返し合う関係です。
その対話から得た教訓は、支援者が答えを持っているふりをしないことです。わからないものはわからないと言い、仮説を置き、必要なデータや専門家を探す。生成AIも同じで、もっともらしい回答を正解として採用するのではなく、論点を広げ、確認項目を作る道具として使うべきです。支援者の信頼は、即答の速さより検証の誠実さから生まれます。
最新技術は仕事だけでなく、趣味にも入ってくる
AIは業務効率化だけの道具ではありません。本人の関心や喜びと結びついた時、スキルチェンジは自分事になります。使いたくなる理由まで見つけましょう。
会の最後には、なぜかギターの話で大いに盛り上がりました。同世代の方がビートルズを練習しており、スマートフォンから音色を選べるモデリングアンプを使っているというのです。特定の年代、会場、楽曲に近いセッティングをライブラリから呼び出せる。レッド・ツェッペリンやディープ・パープルの音を再現したい、と話しているうちに、仕事の議論以上に二人でキャッキャしてしまいました。
この脱線は、実は重要です。AIやデジタル技術は業務効率化だけのものではありません。好きだった音、学びたかった技術、再開したかった趣味を身近にする力があります。人材育成でも同じで、会社の命令だけでは学びは続きません。本人の関心や喜びと結びついた時、スキルチェンジは自分事になります。支援者は、技術の機能だけでなく、人が使いたくなる理由まで見つける必要があります。
DX推進と人材育成へどう持ち帰るか
「誰のどんな課題を解くのか」を一行で書き、人の判断とAIの処理を分け、成果の確認者を決める。この3つでDXは導入から仕事の変革へ進みます。
ここまでの話を現場に持ち帰るなら、まず「新しい技術を入れる」ではなく「誰のどんな課題を解くのか」を一行で書いてください。次に、その課題を解くために人が担う判断と、AIやデジタルに任せる処理を分けます。最後に、成果を誰が確認し、次の改善へつなげるかを決めます。この三つが揃うだけで、DX推進は道具の導入から仕事の変革へ一歩進みます。
生成AIにはハルシネーションがあります。もっともらしい誤りを出す可能性がある以上、出力をそのまま正解にしてはいけません。出典を確かめる、現場データと照らす、責任者が判断する。この基本を守りながら、議事録、提案書、研修教材、顧客理解の整理などに使えば、AIは人を置き換える道具ではなく、人が顧客と現場へ向き合う時間を増やす道具になります。
人材育成では、ツールの操作方法だけを教えて終わらせないことです。受講者が自分の業務で小さな実験を行い、結果と失敗を共有し、次の行動へつなげるところまで設計します。スキルセットだけでなく、試す、問い直す、責任を持つというマインドセットを育てる。私はそれが、AI時代のマインド・トランスフォーメーションだと考えています。
読者の皆さんは、明日どの顧客に話を聞き、どの現場を見に行き、どの仕事をAIに任せてみるでしょうか。大きな構想より先に、小さく確かめる一歩を選んでください。現場で得た答えを次の企画、研修、サービスへ戻す循環が、組織を本当に変えていきます。
90日で始める実践ロードマップ
最初の30日で基準値を記録、次の30日で小さな実験、最後の30日で継続・修正・中止を判断。失敗の条件と理由を構造化すれば学習資産になります。
最初の30日では、対象を広げすぎないことです。顧客対応、研修運営、製造工程、社内支援などから一つを選び、現在の時間、品質、手戻り、利用者の不満を記録します。AIを入れる前の基準値がなければ、導入後に何が良くなったのか判断できません。現場担当者への短いインタビューも行い、数字に表れない負担や工夫を残します。
次の30日では、小さな実験を行います。生成AIで議事録を作る、顧客の声を分類する、設備の画像から異常候補を示すなど、失敗しても業務全体を止めない範囲に限定します。正答率だけでなく、確認に要した時間、現場が感じた使いやすさ、誤りが起きた時の影響も記録してください。AIが速くても、人の確認負担が増えれば全体最適にはなりません。
最後の30日では、継続するもの、修正するもの、やめるものを決めます。成功例だけを発表するのではなく、うまくいかなかった条件と理由も共有します。データが足りなかった、責任者が曖昧だった、顧客の期待を聞けていなかった。失敗を構造化できれば、それ自体が組織の学習資産になります。ここで初めて次の部門や顧客へ広げます。
経営者や管理職は、現場へ「AIを使え」と指示するだけでは足りません。試行に使える時間、利用してよいデータの範囲、承認ルール、誤りが出た時の相談先を決める必要があります。評価制度も重要です。短期的な成功だけでなく、仮説を検証し、学びを共有した行動を評価する。そうしなければ、社員は安全な従来業務へ戻ります。
現場担当者は、AIへ任せる前に、自分が暗黙に行っている判断を言葉にしてください。良い提案書を見分ける基準、異常と判断する兆候、顧客が本音を話した時の変化。こうした知識はマニュアルに残りにくいものです。生成AIとの対話を使って質問を掘り下げ、チームで確認すれば、ベテランの経験を次世代へ渡す教材にできます。
人事・教育部門には、学習と実務を分離しない設計が求められます。研修で操作を覚えたら、実際の業務課題で試し、上司や同僚からフィードバックを受け、成果物を改善する。eラーニング、集合研修、現場プロジェクトを一本のキャリアパスとしてつなげます。資格やスキルチェックは到達点ではなく、次の実践へ進むための地図として使うべきです。
そして、成果を顧客の言葉で確認してください。処理時間が短くなっただけでなく、相談しやすくなったか、提案が理解しやすくなったか、現場の不安が減ったか。ビジネスの価値は社内の作業量だけでは決まりません。顧客と現場の変化を観察し、その答えをまた製品、サービス、人材育成へ戻す。この反復が、DXを一過性のプロジェクトから継続的な変革へ変えます。
AI時代に守るべき判断と信頼
業務ごとにリスクを分類し、低リスクは自動化、高リスクは人の承認を必須に。透明性とAIを使わない選択肢を残すことが、長期の信頼を生みます。
AIが高性能になるほど、任せてよい範囲の設計が重要になります。文章の要約と、採用、融資、安全、品質に関する最終判断では、誤りが与える影響が違います。業務ごとにリスクを分類し、低リスクは自動化、高リスクは人の承認を必須にする。機密情報や個人情報を入力しないルールも、抽象的な注意ではなく具体例で示してください。
説明できることも信頼の条件です。顧客へ提案する時、AIが出したからではなく、どの情報を使い、どんな基準で採用し、人がどこを確認したかを伝える。製造現場なら、異常判定の根拠と停止条件を残す。支援業務なら、仮説と事実を分ける。透明性は作業を少し増やしますが、長期的には再現性と安心を生みます。
また、AIを使わない選択肢も残すべきです。すべてを自動化すると、現場が判断力を失い、障害時に復旧できなくなる恐れがあります。重要な技能は人が反復し、AIの出力と比較する。若手には基礎を学ぶ機会を与え、ベテランには暗黙知を言語化してもらう。人とAIを競わせるのではなく、互いの弱点を補う設計が必要です。
変革は、派手な導入発表より、日々の小さな約束から進みます。会議の終わりに決定事項を確認する。顧客の声を一件でも製品改善へ戻す。AIの誤りを隠さず共有する。現場の提案へ翌週までに返答する。こうした行動の積み重ねが、技術への信頼と組織への信頼を同時に育てます。
結局、デジタル・トランスフォーメーションはシステム部門だけの仕事ではありません。経営は目的と責任を示し、現場は事実と知恵を出し、人事は学びの機会を作り、技術者は安全で使える形へ実装する。それぞれが自分の専門領域に閉じず、顧客の成果という同じ方向を見る必要があります。その対話を続ける力こそ、超知性リテラシーやAgentic AIの時代にも失ってはいけない人間の基礎能力です。
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よくある質問
支援者の役割変化から始め方、効果、失敗、相談まで、検討者が抱く疑問を順に解説します。
重要なキーワード解説
本記事で登場した重要用語を、支援者とAI時代の観点から簡潔に解説します。
支援者
答えを一方的に教える人ではなく、現場の問いを整理し、専門家と顧客をつなぎ、実行まで伴走する人です。
企業内診断士
企業に所属しながら中小企業診断士の知見を生かす人材です。社内DXや新規事業、人材育成の横断ネットワークとして期待できます。
マインド・トランスフォーメーション
新しい技術の導入に合わせて、問い方、判断、協働の姿勢を変える意識変革です。
著者紹介
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近森満(ちかもり みつる)
株式会社サートプロ 代表取締役CEO / DXコンサルタント/IT人材育成/検定事業化
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定・+DX認定・アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。 |
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・一般社団法人 IT職業能力支援機構 理事長(Android資格)
・電気・電子系技術者育成協議会 副理事長(E検定)
・組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会 メンバー(組込み)
・ET教育フォーラム合同会社 代表(コンテンツ制作)
・経済産業省 地方版IoT推進ラボ ビジネス創出事業メンター(IoT支援)
・経済産業省 地域DX推進ラボ ビジネス創出事業メンター(DX支援)
・デジタル庁 デジタル推進委員(デジタル化支援)
・DX事業共同組合 設立理事(DX推進)
・一般社団法人日本サステナブルビジネス機構 幹事(SDGs認証)
・”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会 理事(DEI支援)
・アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)
・一般社団法人国際サイバーセキュリティ協会 事務局長(IACS認定)
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