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会社経験は、もうノウハウと呼べない時代へーーーAI時代に問われる「経験の本当の価値」

2025年12月22日
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【記事概要】

生成AIとAIエージェントが現場に入り込み始めた今、「会社経験=ノウハウ」という前提そのものが大きく揺らいでいます。これまで長年の現場経験や成功・失敗体験は、比較対象が少なかったがゆえに「価値あるノウハウ」として機能してきました。しかし生成AIの登場によって、言語化された知識や行動パターンは瞬時に共有・再利用され、個人が抱えてきた暗黙知さえも形式知へと変換されつつあります。

近森満は、この変化を「ノウハウの価値がなくなる話」ではなく、「ノウハウの定義そのものが変わる話」だと捉えています。AIは集合知を扱う触媒として機能し、人間の経験を蓄積し、比較し、構造化していきます。その結果、経験そのものを抱え込む姿勢は、かえって自分自身の価値を検証する機会を失わせてしまう危険性もはらんでいます。

これから問われるのは、どれだけ多くの経験を持っているかではありません。経験から何を抽出し、どう再解釈し、どの場面で使うのかという「気づき」と「編集力」です。AIに1から9の工程を任せ、人間は0から1、そして9から10を担う。その役割分担を理解し、AIを使いこなす側に立てるかどうかが、AI時代における本当のキャリア価値を左右します。本記事では、こうした視点から「経験の本当の価値」について深く掘り下げていきます。

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【本文】

こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ、近森満です。
www.certpro.jp/blogs/dx_chikamori/
当社では「DX推進人材教育プログラム」として初回無料のコンサルティングを提供しています。DX推進や人材育成のご相談をお待ちしています。
www.certpro.jp/dxconsulting/

会社経験はなぜノウハウと呼ばれてきたのか

年末が近づき、今年を振り返る中で、改めて感じるのが生成AIの存在感です。今年は生成AIが本格的に実務へ入り込み、さらにAIエージェントという言葉も一気に広がりました。ただ、言葉が先行し、現場で本当に使いこなせているかというと、まだ途上段階だと感じています。

これまで会社経験や現場経験は、ノウハウとして扱われてきました。その理由は非常にシンプルで、比較対象がなかったからです。長年の経験、成功体験、失敗談は、その人やその会社の中に閉じた情報であり、外部と比べる手段がほとんどありませんでした。

私自身も長く仕事をしてきましたので、勘・経験・度胸(KKD)のようなものに頼って判断してきた場面は数え切れません。昔はこうだった、俺たちの時代はこうだった、そんな言葉が出てくるのも、悪気があるというより、比較される環境がなかった時代を生きてきたからだと思います。

ノウハウは、専門的な知識や技術、手法、情報を意味し、英語の「know-how」から来た言葉です。 knowは「知識」、howは「やり方」を指し、何かを実行する際の進め方や手順全般を表します。 具体的には、業務や作業を効率的かつ効果的に遂行するための方法や技術を指し、特定の分野での経験に基づく知識が集約されています。

生成AIが変えた経験の価値

生成AIが登場したことで、状況は一変しました。質問をすれば、インターネット上に存在する言語化された知識や事例を整理し、文脈を持った形で返してくれます。これは、人類が積み上げてきた知識が、共有地として使われ始めたことを意味しています。

ここで重要になるのが、暗黙知と形式知という考え方です。人の経験の多くは、言語化されていない暗黙知で構成されています。一方、言語や数値、手順として表現できるものが形式知です。

AIは、世界中の形式知や行動パターンを統合することで、人が気づかなかった暗黙知の構造を浮かび上がらせる可能性を持っています。暗黙知そのものが消えるわけではありませんが、構造として見えるようになる点が決定的な違いです。

集合知として蓄積される会社ノウハウ

さらに重要なのが集合知です。個人の知恵には限界がありますが、多数の人間の経験を集約し分析すると、個人では到達できない洞察が生まれます。AIはこの集合知を扱う触媒として機能します。

これまで個人や会社の中に閉じていたノウハウは、AIを通じて形式知化され、比較され、誰もが使える形へと変換されていきます。売上推移、行動パターン、業務プロセスなど、暗黙知だったものが数値やデータとして表に出ることで、経験は相対化されます。

つまり、会社経験がノウハウだと信じられてきたのは、比較できない時代の話であり、比較できる時代に入った今、その前提は崩れ始めているのです。

AIはノウハウを生み出さないのか

AIはノウハウを生み出さない、という意見をよく耳にします。確かに、現時点ではAIがゼロから新しいノウハウや新規ビジネスを生み出すケースは多くありません。AIが出してきたアイデアを、そのまま商品化する人もほとんどいないでしょう。

しかし、私たちは日々、AIに情報を入力し続けています。文章、指示、行動ログ、業務データ、ライフログ、etc。AIはそれらを学習し、人間の行動パターンそのものを取り込んでいきます。

その結果、個人の経験や会社の経験は、暗黙知から形式知へ、そして集合知として蓄積されていきます。誰もが使えるセオリーやプロセスが生まれる環境が、すでに整い始めているのです。

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人間に残される役割とは何か

では、人間は何をすべきなのでしょうか。ここで重要なのが、AIとの役割分担です。私はよく、0から1と9から10は人間の仕事、1から9はAIに任せればいいとお話ししています。

AIと1から9の領域で戦っても、勝ち目はありません。むしろ、自分の経験やノウハウはAIに入力し、AIに任せるべきです。その上で、人間は何をやるかを決め、結果をどう使うかを判断する役割に集中する必要があります。

経験の本当の価値は、持っていることではなく、気づきとして抽出し、再利用し、適切な場面で使えるかどうかにあります。

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まとめ:経験を抱え込む時代の終わり

会社経験やノウハウが不要になるわけではありません。ただし、抱え込む価値はなくなりつつあります。経験は比較され、検証され、再解釈されることで初めて意味を持ちます。それを可能にしたのがAIであり、AIとの協調を前提とした働き方を模索していくことが必須となります。
AIを敵と見るのではなく、経験を増幅させる装置として使いこなす姿勢が求められます。

さいごに

本日の内容が、あなたのシンギュラリティ時代への準備に向けた気づきや次の一歩になれば幸いです。
10年先、AGIやASIが当たり前になる未来に向けて、私たち自身もアップデートし続けていきましょう。

「社員のDXマインドをどう高めるか?」、「実践的なITスキル教育が進まない」など、DX推進担当者の育成やIT教育研修でお悩みでしたら、ぜひ一度お聞かせください。
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次回の記事も、どうぞお楽しみに!


キーワードの解説

DX推進

DX推進とは、デジタル技術を導入すること自体が目的ではなく、業務プロセスや組織文化、意思決定のあり方まで含めて変革する取り組みを指します。生成AIの普及によって、DX推進はIT部門だけの課題ではなくなりました。現場の暗黙知をどう形式知に変換し、AIに学習させ、組織全体の集合知として活用するかが重要になります。DX推進とは、ツール導入ではなく、人と組織の思考様式をアップデートし続ける営みそのものだと言えます。

生成AI

生成AIとは、過去に存在する膨大なデータや知識をもとに、新たな文章、画像、アイデアなどを生成するAI技術です。重要なのは、生成AIがゼロから価値判断を行う存在ではない点です。人間の経験や行動、言語化された知識を学習し、それを再構成して提示します。そのため、生成AIの価値は入力される情報の質に大きく依存します。人間が経験を言語化し、検証し、再解釈する力を持つことで、生成AIは強力な思考支援装置となります。

暗黙知・形式知・集合知

暗黙知とは、言葉にされていない経験や勘、感覚を指します。形式知は、それを言語や数値、手順として表現したものです。生成AIの登場によって、暗黙知は形式知へ、個人の知識は集合知へと変換されやすくなりました。集合知とは、多数の人間の経験を集約し分析することで生まれる知恵です。AIはこの集合知を扱う触媒として機能し、比較と検証を可能にします。これにより、経験の価値は「持っていること」から「どう使うか」へと移行しています。


【著者紹介】

近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ 代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
IoT検定制度委員会 事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
一般社団法人 IT職業能力支援機構 理事長(Android資格)
電気・電子系技術者育成協議会 副理事長(E検定)
NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会 メンバー(組込み)
ET教育フォーラム合同会社 代表(コンテンツ制作)
経済産業省地方版IoT推進ラボ ビジネス創出事業メンター(IoT支援)
経済産業省地域DX推進ラボ ビジネス創出事業メンター(DX支援)
デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
DX事業共同組合 設立理事(DX推進)
一般社団法人日本サステナブルビジネス機構 幹事(SDGs認証)
”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会 理事(DEI支援)
アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)
一般社団法人国際サイバーセキュリティ協会 事務局長(IACS認定)

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