
【記事概要】
IT・技術の検定試験にはどんなメリットがあるのか──前編では資格の役割と意義を押さえ、中編では代表的資格やIoT検定制度など、資格体系の全体像を整理しました。最終章となる後編では、クラウドサービス検定、アジャイル検定、E検定といった新たな資格が誕生した背景を紐解きながら、これからの資格がどのように変化し、社会を支えていくのかを深掘りします。DXの加速、行政のクラウド化、マイナンバー連携構想、資格証明のブロックチェーン化など、資格は大転換期を迎えています。
本記事では、近森満が実際に手掛けた複数の検定立ち上げ経験をもとに、検定制度がどのように社会価値を持つのか、また未来のDX・AI時代に求められる“新しいスキル証明の姿”を具体的に提示します。資格は単なる肩書きではなく、企業と個人の成長を支える“インフラ”になりつつあるのです。

【本文】
こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ 近森満です。
www.certpro.jp/blogs/dx_chikamori/
当社では「DX推進人材教育プログラム」として初回無料のコンサルティングを提供しています。DX推進や人材育成のご相談をお待ちしています。
www.certpro.jp/dxconsulting/
クラウドサービス検定が示す、資格の新たな進化形
後編では、クラウドサービス検定を中心に、資格がどのように社会の変化と連動してきたかを解説します。
中編でも触れましたが、サートプロが直近で手がけたのが ASPICクラウドサービス検定 です。この資格が必要とされた背景には、行政・産業界全体でクラウド移行が本格化してきた流れがあります。
クラウドは、単なる“インフラの置き換え”ではありません。
働き方、情報流通、データ管理、セキュリティ、行政手続きなど、社会全体の仕組みを変える存在です。
だからこそ、そこに関わる人材の“能力証明”が求められるようになりました。
たとえば:
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全国3,000以上の自治体でクラウド導入が進む
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行政手続きのオンライン化
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デジタル庁の創設とマイナンバー制度の統合
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データガバナンス強化
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セキュリティ標準の見直し
これらの変化に対応するには、「クラウドを理解した人材」が必要不可欠です。
ASPICクラウドサービス検定は、この社会変化を背景に誕生した資格であり、単なる試験ではなく「クラウド時代の必修科目」とも言える位置付けになってきています。
クラウドが求める“最低限の基礎力”をどう担保するのか
ASPICクラウドサービス検定の特徴は、「クラウドの基礎〜最新動向までを俯瞰できる能力」を測ることです。
シラバスには次の領域が含まれます。
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クラウドの基本概念
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設計・構築・運用
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導入・利活用
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セキュリティ・法規制
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最新トレンド(SaaS・PaaS・IaaSの変化など)
DX推進の現場では、クラウドの導入判断や、適切なサービス選定、セキュリティ対応ができる人材が求められます。
ASPICクラウドサービス検定は、それらの“最低限の理解ライン”を社会全体で揃える役目を持っているのです。
事例:自治体クラウド導入が生んだ新たな資格ニーズ
行政の現場では、クラウド移行が急激に進んでいます。
しかし、課題は次の点にありました。
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担当者がクラウドの専門知識を持たない
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ベンダー任せで、内部に判断能力がない
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地方自治体では人材不足が深刻化
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仕様の理解が浅いまま導入が進む危険性がある
こうした状況を解消するため、ASPICクラウドサービス検定が求められるようになったのです。
資格は、“誰がどこまで分かっているのか”を明確にする唯一の指標 です。
これは前編・中編でも一貫して語ってきた「スキル可視化」とまさに同じ構造です。
進む資格のデジタル化:ブロックチェーン証明書という革命
ASPICクラウドサービス検定の大きな特徴のひとつが、
「ブロックチェーン証明書」の採用です。
これは資格証明のあり方を大きく変える可能性を秘めています。
従来は:
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紙の証明書を郵送
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紛失・破損のリスク
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偽造される可能性
といった課題がありました。
しかしブロックチェーン証明書なら:
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改ざん不可能
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半永久的に保存
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本人がデジタルで提示・共有できる
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国際的に利用しやすい
というメリットがあります。
DX・生成AI時代において、“証明の透明性”はますます重要になります。
AIが生成した偽造データと人間の正しい証明を区別する必要も出てくるでしょう。
だからこそブロックチェーン証明書は、未来の資格インフラの中心となる可能性があります。
アジャイル検定・E検定が企業の「組織学習」を支えている
後編では、クラウドだけでなくアジャイル検定・E検定といった資格がどのように社会で使われているかも確認しておきます。
● アジャイル検定
アジャイル開発は、DXの中核を担う重要な開発手法です。
特に企業のシステム内製化が進む中、アジャイルの理解は必須になりました。
アジャイル検定は、開発者だけでなく、プロダクトオーナーやプロジェクト管理者にも価値があります。
「共通言語」を持つことで、開発スピードと品質が向上します。
● E検定 ~電気・電子系技術検定試験~
E検定は、自動車・電装・製造系の“ものづくり産業”を支える専門資格です。
元々はデンソーの社内資格として誕生し、その後、社会的ニーズの拡大に伴い一般化されました。

重要なのは、「自動車に搭載される半導体やソフトウェアのボリュームが増大していることと技術の進化スピードに社員教育が追いつかない」という危機感から生まれた資格だという点です。
DX推進の本質は“テクノロジー理解 × 組織変革”です。
E検定はまさにその仕組みを長年支えてきた存在です。
事例:企業内で行われる「プライベート試験」という仕組み
E検定では、東京・大阪などの公開試験に加えて プライベート試験 が導入されました。
これは企業内で受験する仕組みで、次のメリットがあります。
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地方の社員も受験できる
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受験日程を柔軟に設定できる
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研修と連動させた学習設計が可能
コロナ禍で公開試験が実施できなかった時期、プライベート試験が導入され、多くの企業が資格取得を継続できました。
これこそが、資格制度が社会環境に適応して進化する証拠です。
資格の未来は「連携」と「統合」にある
ASPICクラウドサービス検定やE検定に限らず、これからの資格制度には大きな潮流があります。
それが:
① マイナンバーとの統合
国家資格を中心に、資格情報がマイナンバーと連携される可能性は高まっています。
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医師免許
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パイロット免許
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電気工事士
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情報処理技術者試験
これらの資格情報を統合することで、日本全体の「人材データベース」が構築できます。
② デジタル証明書による即時共有
採用や転職では、「資格証のデジタル提出」が一般化しつつあります。
ブロックチェーンの証明書はこの流れを加速させます。
③ マイクロクレデンシャル化
知識更新のスピードが速い領域(AI、クラウド、サイバー、DX人材など)は、細かい単位の“スキル証明”が求められています。
資格はもはや 年単位ではなく、月単位で更新される時代 に移っていくでしょう。
まとめ:資格は“未来の働き方インフラ”になる
IT資格のメリットというテーマで、3回にわたって深掘りしてきました。
後編のポイントを整理すると以下の通りです。
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クラウド時代に対応するため、ASPICクラウドサービス検定が誕生
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ブロックチェーン証明書が資格のデジタル化を加速
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アジャイル検定・E検定など、企業変革を支える資格が拡大
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プライベート試験が学習の機会を広げる
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資格の未来は「連携」「統合」「マイクロクレデンシャル化」がカギ
DX時代において資格は、
“個人の成長”と“組織の進化”をつなぐ重要なインフラ
へと進化しています。
資格はもはや“試験”ではなく“未来へのパスポート”なのです。
当社もチャレンジしています。
2026年は当社サートプロの設立20周年にあたります。社長として、この記念すべき年に記録や記憶に残るような取り組みをしたいと考え、ギネス世界記録に挑戦しております。皆様のご期待に添えるよう、尽力して参ります。
さいごに
本日の内容が、あなたの「シンギュラリティ時代への準備」に向けた一歩になれば幸いです。
AGI・ASI が高度化する未来では、人は“学び続ける力”と“証明し続ける仕組み”を求められます。
検定試験は、そのための強力なツールです。
「社員のDXマインドをどう育てるか?」
「デジタル教育をどう押し進めるか?」
こうしたお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。
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次回の記事も、どうぞお楽しみに!
【重要なキーワード解説】
● ASPICクラウドサービス検定
ASPICクラウドサービス検定とは、クラウドの基本概念、設計・構築、導入・利活用、セキュリティ、法規制、最新動向など、現代のDX環境に不可欠となったクラウド技術を体系的に理解しているかを測定する資格です。クラウドは企業や行政機関における情報基盤となり、全国どこからでも安全にデータへアクセスできるなど、多くのメリットをもたらします。しかし導入には必ずリスク管理やセキュリティ要件を理解する必要があります。クラウドサービス検定は、この“最低限の理解ライン”を可視化し、クラウド時代の共通言語として機能します。特に自治体クラウド化や企業のDX推進が加速するなか、クラウド導入・運用の基礎リテラシーを担保するための重要な資格となっています。
● ブロックチェーン証明書
ブロックチェーン証明書とは、資格合格の証明書をブロックチェーン技術を使って発行する仕組みです。ブロックチェーンには「改ざんができず、証明の真正性が保証される」という最大の特徴があり、資格証明や学位証明を安全にデジタル化する上で極めて有効です。従来の紙の証明書は紛失・偽造・改ざんのリスクがあった一方、ブロックチェーン証明書なら、受験者自身がスマートフォンやPCで安全に管理し、企業や教育機関にオンラインで提示できます。DX・AI時代において、「本人性を証明できるかどうか」はますます重要となり、生成AIの発達により偽造データが容易に作られる未来では、ブロックチェーン証明書は社会の基盤技術として不可欠になります。
● アジャイル検定
アジャイル検定は、アジャイル開発の基本原則、開発プロセス、チームコラボレーション、プロダクトマネジメントに必要な知識を測る資格です。アジャイル開発はDX推進に不可欠な要素であり、変化の激しい時代に適応するための“柔軟性”と“スピード”を企業へもたらします。この資格を取得することで、エンジニアだけでなくプロジェクト管理者やビジネス職も共通言語を持つことができ、組織全体の開発能力が向上します。社内の内製化が進む企業においてアジャイル検定は教育体系の中心となり始めており、DX実現に必要なチームワークを強化する役割も担っています。
【スキルチェックリスト】
今日からあなたも“未来に通用するデジタル人材”として行動をチェックしましょう!
□ クラウドの基礎理解をアップデートした
□ ブロックチェーン証明書など新しい資格制度を調べた
□ 自社で必要なDX資格体系を考えてみた
□ マイクロクレデンシャルで学習計画を立てた
□ 来年度に取得する資格を1つ決めた
【著者紹介】
近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ 代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
・IoT検定制度委員会 事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
・一般社団法人 IT職業能力支援機構 理事長(Android資格)
・電気・電子系技術者育成協議会 副理事長(E検定)
・NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会 メンバー(組込み)
・ET教育フォーラム合同会社 代表(コンテンツ制作)
・経済産業省地方版IoT推進ラボ ビジネス創出事業メンター(IoT支援)
・経済産業省地域DX推進ラボ ビジネス創出事業メンター(DX支援)
・デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
・DX事業共同組合 設立理事(DX推進)
・一般社団法人日本サステナブルビジネス機構 幹事(SDGs認証)
・”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会 理事(DEI支援)
・アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)
・一般社団法人国際サイバーセキュリティ協会 事務局長(IACS認定)
