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大人の学びは知識より“問い方”ーー年齢に関係なく考える力を磨く方法

2025年10月2日
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【記事概要】

本記事では、「大人の学びは知識より“問い方”である」という視点から、AI時代・超知性ASI時代における学び直しの本質を掘り下げていきます。近森満は、学ぶという言葉そのものが大人にとって心理的なハードルになりやすい現実を踏まえつつ、学びとは暗記や知識の蓄積ではなく、「課題をどう捉え、どのような問いを立てるか」によって価値が決まる行為だと語ります。

子どもと大人の学びの違いを整理しながら、成人教育理論であるアンドラゴジーを背景に、大人は経験や実務を土台に課題解決型で学ぶ存在であることを明らかにします。特にDX推進や生成AI活用の文脈では、DXは目的ではなく“道具”であり、重要なのは「なぜ困っているのか」「何を解決したいのか」という問いをどう設計するかだと強調します。

AIは答えを提示することは得意ですが、問いを立てることは人間にしかできません。0から1の課題設定こそが人間の価値であり、1から9のプロセスはAIに任せればよいという役割分担を提示します。毎日5分のAI壁打ちや、視点をずらす問いの訓練を通じて、年齢に関係なく「考える力」を資産として磨く重要性を伝えます。

知識や情報の格差がフラット化するAI社会において、問い力や課題抽出力こそが最大の差別化要因になります。本記事は、その考え方をDX・人材育成・実務の現場視点から具体的に解説する内容です。

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【本文】

こんにちは、IT・DX教育サービスを提供している株式会社サートプロの近森満です。
www.certpro.jp/blogs/dx_chikamori/

当社では「DX推進人材教育プログラム」として、初回無料のコンサルティングを行っています。
DX推進や人材育成でお悩みの方は、ぜひご相談ください。
www.certpro.jp/dxconsulting/


大人の学びは、なぜ苦しく感じるのか

「学びましょう」「勉強しましょう」と言われて、素直に前向きになれる大人は、正直あまり多くありません。
むしろ、多くの人は心のどこかで「うっ」と身構えるのではないでしょうか。

これは怠けているからでも、意欲が低いからでもありません。
人間の脳は「学ぶ」という言葉そのものに、テストや評価、失敗体験を無意識に結びつけてしまう性質を持っています。

一方で、私たちは日常生活の中で、毎日何かしら新しいことに出会っています。
初めて使うアプリ、初めて聞く言葉、仕事で起きた想定外の出来事。
「これ、どういうことだろう?」と考える行為そのものが、実は学びです。

にもかかわらず、それを「学び」と認識した瞬間に、途端にハードルが上がってしまう。
これが大人の学びが続かない大きな理由だと私は考えています。


大人が本当にやりたいのは「学ぶこと」ではない

たとえば、ギターが好きな人を想像してみてください。
「音楽を学びたい」と口では言いますが、実際にやりたいのは何でしょうか。

コード理論を暗記することではありません。
弦の材質を覚えることでもありません。

本当は、ギターを弾いている自分の姿を思い浮かべたり、誰かの前で演奏したり、バンドを組んだりすることです。
つまり「実践」や「体験」に価値を感じているのです。

これは仕事でも同じです。
大人が学びたいと思うとき、その動機の正体は「知識」ではなく、「課題を解決したい」「困っている状況を変えたい」という思いです。

その実、評価されたいという気持ちが本音かもしれません。

ここを取り違えると、大人の学びは一気につらいものになります。


大人の学びを支えるアンドラゴジーという考え方

成人教育の世界には「アンドラゴジー」という考え方があります。
提唱したのは教育理論家のマルコム・ノールズ氏です。

アンドラゴジーでは、大人は次のような学習者だと定義されています。

・知識そのものより、課題解決に動機づけられる
・経験を学習資源として活用する
・学んだ内容をすぐ実務に使いたい

つまり、大人は「覚える人」ではなく「使う人」なのです。

年齢を重ねると暗記力や吸収スピードは落ちていきます。
これは事実です。

しかし、それは大人の学びの本質ではありません。
大人は、経験という圧倒的な武器を持っています。

アンドラゴジー(Andragogy)とは、マルカム・ノールズが提唱した成人学習理論で、「大人(aner)」と「指導(agogus)」を組み合わせた造語。「自己概念」「経験」「レディネス(学ぶ準備)」「方向付け」「動機付け」の5つの観点から、大人の学習は子ども(ペタゴジー)とは異なり、自己主導的で問題解決志向、経験を活かす能動的な学びが特徴で、企業研修などで注目されています。


子どもと大人は、スタートラインが違う

子どもは「できなくて当たり前」の状態からスタートします。
だからこそ、失敗を恐れず、何でも試します。

一方で大人は、ある程度「できてしまう」状態にいます。
何もしなくても「まあ、だいたいこんなもんだろう」と想像できてしまう。

この「想像できてしまうこと」が、行動を止める原因になります。

しかし裏を返せば、大人は「なぜそうなっているのか」を考える力をすでに持っているとも言えます。
これこそが、大人の学びの強みです。


DXは目的ではなく「道具」である

DX推進という言葉が当たり前になりました。
しかし、ここで一度立ち止まって考えてほしいのです。

DXそのものが目的になっていないでしょうか。

DXはデジタル・トランスフォーメーション、つまり変革です。
ツールであり、手段です。

・売上が伸び悩んでいる
・人手が足りない
・業務が属人化している

こうした「困りごと」があるから、DXという手段が必要になります。
問いを立てずにDXだけ導入しても、何も変わりません。


問いが変われば、情報の使い方が変わる

大人が学ぶべきなのは「何を学ぶか」ではありません。
「どう問いを立てるか」です。

なぜこの問題が起きているのか。
本当の課題はどこにあるのか。
誰のための解決なのか。

問いが明確になった瞬間、情報は意味を持ち始めます。

これはDXでも、生成AIでもまったく同じです。


AI時代に人間が担う役割

AIは答えを出すことが得意です。
しかし、問いを立てることはできません。

0から1、つまり課題設定や問題提起は人間の仕事です。
1から9はAIに任せればいい。

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最終的に意思決定し、責任を取るのも人間です。

この役割分担を理解しているかどうかで、AI活用の成果は大きく変わります。


毎日5分でできる「問い力」の鍛え方

難しいことは必要ありません。

・今日困ったことをAIに投げる
・書類をAIに通してチェックする
・視点を変えた問いを投げてみる

これだけでも、問い力は確実に磨かれます。

重要なのは、AIを「たまに使う道具」にしないことです。
生活や仕事の中心にAIを置くことが、AI時代のマインドセットです。


問い力は、AI時代の最大の資産になる

AIが前提の社会では、知識や経験はフラットになります。
誰でも同じ情報にアクセスできるからです。

その中で差がつくのは、問いの質です。
どこを見るか。
どう切り取るか。
どうひねるか。

この力は、一朝一夕では身につきません。
だからこそ、今から鍛える価値があります。


まとめ:大人の学びは「解き方」と「生かし方」

大人は、知識暗記で成長する必要はありません。
解き方と、生かし方で成長できます。

年齢は関係ありません。
経験があるからこそ、大人の学びには価値があります。


さいごに

本日の内容が、あなたの「シンギュラリティ時代への準備」に向けた、
小さな気づきや次の一歩のヒントになれば幸いです。

10年先、超知性ASIやAGIが当たり前になる未来に向けて、
私たち自身をアップデートし続けることが、今もっとも重要です。

「社員のDXマインドをどう高めるか」
「実践的なITスキル教育が進まない」

そんな悩みがありましたら、ぜひ一度お聞かせください。
初回無料の「DX推進人材教育プログラム」コンサルティングが、必ずお役に立ちます。
www.certpro.jp/dxconsulting/

次回の記事も、どうぞお楽しみに。


キーワードの解説

問い力(問いの立て方)

問い力とは、目の前で起きている事象や問題に対して、「なぜそうなっているのか」「本当の課題はどこにあるのか」を言語化する力です。AIや生成AIが高度化する現代では、答えそのものは誰でも簡単に手に入るようになりました。その一方で、どの問いをAIに投げるかによって、得られる結果の質は大きく変わります。大人の学びにおいて重要なのは、知識を増やすことではなく、経験や実務を背景に問いを磨くことです。問い力は年齢に関係なく鍛えることができ、DX推進や人材育成、経営判断においても最大の差別化要因となります。

DX推進

DX推進とは、単なるIT導入やデジタル化ではなく、デジタル技術を「道具」として使い、企業や組織、働き方そのものを変革していく取り組みです。DXは目的ではなく手段であり、「なぜ変える必要があるのか」「何を解決したいのか」という問いが曖昧なままでは成果につながりません。生成AIやAIツールを活用する際も同様で、課題設定と問いの設計がDXの成否を左右します。DX推進においては、技術よりもマインドセットと問い力が重要になります。

生成AIと人間の役割分担

生成AIは、情報整理、文章生成、分析、アイデア展開などにおいて圧倒的なスピードと量を発揮します。しかし、0から1の課題設定や問題提起は人間にしかできません。人間は「何が問題なのか」「それは誰のための課題なのか」を考え、AIはその問いに対する解決策や選択肢を提示する。この役割分担を理解することが、AI時代の学び直しとDX推進の鍵になります。


【著者紹介】

近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ 代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
IoT検定制度委員会 事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
一般社団法人 IT職業能力支援機構 理事長(Android資格)
電気・電子系技術者育成協議会 副理事長(E検定)
NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会 メンバー(組込み)
ET教育フォーラム合同会社 代表(コンテンツ制作)
経済産業省地方版IoT推進ラボ ビジネス創出事業メンター(IoT支援)
経済産業省地域DX推進ラボ ビジネス創出事業メンター(DX支援)
デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
DX事業共同組合 設立理事(DX推進)
一般社団法人日本サステナブルビジネス機構 幹事(SDGs認証)
”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会 理事(DEI支援)
アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)
一般社団法人国際サイバーセキュリティ協会 事務局長(IACS認定)

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