
【記事概要】
「エクセルの次に来る業務効率化ツール=ノーコード」をテーマに、現場が主導するDXの本質と、中小企業がこれから本当に取り組むべき“業務デジタル化の一丁目一番地”を深掘りしています。
kintone/AppSheet/PowerApps の3大ノーコードツールが、エクセル文化にどのように置き換わり、組織全体の生産性を底上げするのかを、現場目線・経営目線の両方からわかりやすく解説。
また、あなた自身のスキルセットがどのように変化すべきか、従来の「ITが苦手」という固定観念がどのように解けていくのか、そして行政支援がDXの普及をどのように後押ししているのかも実例を交えて紹介。埼玉県の50社支援プロジェクトをはじめ、自治体が本格的にノーコードを推進する背景、そこで起きている成功・課題・気づきがリアルに語られています。
本記事は、エンジニア人材を育成する責任者・事業部長・DX推進担当者など、「組織でデジタル変革を起こす立場」の人に向けて、行動につながる実践知をまとめた内容になっています。

【著者情報】
こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ 近森満です。
www.certpro.jp/blogs/dx_chikamori/
当社では「DX推進人材教育プログラム」として初回無料のコンサルティングを提供しています。
DX推進や人材育成のご相談をお待ちしています。
www.certpro.jp/dxconsulting/

エクセル文化の限界が、ノーコード時代を呼び寄せた
長年、日本企業の業務はエクセルによって支えられてきました。見積書、シフト管理、勤怠、在庫、売上管理──エクセルは“万能ツール”として、どの現場でも重宝されてきたはずです。
しかし、DX推進が求められる中で、エクセルでは限界が明確になりつつあります。データの一元管理ができない、共有すると壊れる、属人化が進む、拠点横断の運用ができない…。
私自身、コンサルティングの現場に伺うと、経営者が「あのエクセルの最新版どこいった?」と探している姿に何度も出会いました。これは“文化としてのエクセル依存”が生んだ、構造的な問題です。
ここで必要なのは「エクセルを完全に捨てること」ではなく、エクセルを超えた“業務の仕組み化”へ進むことです。その担い手がノーコードツールです。
ノーコードが“現場DX”を加速させる理由
ノーコードの本質は「現場の人が、自分たちの手で業務アプリを創れること」です。
DXが進まない企業に共通しているのは、次の2つです。
・IT部門に依存しており、現場の改善スピードが遅い
・外部ベンダーに丸投げし、“現場の課題”が反映されない
ノーコードはこのボトルネックを一気に解消します。
kintone、AppSheet、PowerApps は、それぞれ得意領域が違いますが、共通しているのは 「ドラッグ&ドロップでアプリができる」「全社員で共有できる」 という点です。
私が企業支援の現場で実感しているのは、ツールの強さより“現場が主役になれる体験”のインパクトです。エクセルを触ってきた人なら誰でも、ノーコードなら数時間でアプリを形にできます。
気づけば現場が主体となり、DX推進が“やらされごと”から“自分ごと”に変わります。
事例: 埼玉県50社支援で見えた「現場が変わる瞬間」
2025年、埼玉県では中小企業50社に対して「ノーコード導入支援」を実施しました。私たちサートプロは、そのうち40社を担当しました。
最初は皆さん口を揃えて「私たちはIT苦手だから…」と言います。しかし5回の伴走支援が進むにつれ、現場社員の目の色が変わっていきます。
・紙の申請書がアプリに置き換わる瞬間
・拠点間のデータ共有が自動化する瞬間
・「これならもっと作れそう!」という自走の芽が出る瞬間
この変化こそ、ノーコードがもたらすDXの本質です。
kintone/AppSheet/PowerApps の違いと使い分け
3大ノーコードについて、私の支援経験から“本音で”違いを整理すると次のとおりです。
● kintone:現場主導の業務アプリが最速で作れる。チーム運用が得意。
● AppSheet:Google Workspaceと相性抜群。モバイル活用に強い。
● PowerApps:Microsoft 365と組み合わせると爆発力がある。ただし設定は少し難しい。
企業にはそれぞれ文化があるため、「どれが最強か」ではなく “自社の運用スタイルに合うか” が最重要です。
特にPowerAppsはセキュリティ設定の奥が深く、うちのスタッフも最初は苦労しました。ですが一度使いこなすと、DXの幅が一気に広がります。
事例: 営業管理をノーコードで再構築した製造業企業
ある地方の製造業では、営業日報をエクセルで管理していましたが、拠点が増えるたびに日報が迷子に。
そこでPowerAppsを使って営業日報をアプリ化したところ
・入力工数40%削減
・社内コミュニケーションが可視化
・経営会議の意思決定スピード向上
という成果につながりました。
「もっと早くやればよかった…」が現場の本音でした。
1) kintone
プログラミング知識がなくても業務アプリを自社で作成できるクラウドサービス。「表計算ソフトより快適に、専用システムより柔軟に」と銘打たれ、データベース・ワークフロー・共有といった機能を現場目線で提供しています。
ポイント:
・ノーコード/ローコードでのアプリ構築が可能。
・日本国内の中小企業~大企業まで幅広く採用されており、現場主導の改善に強み。
・エクセル文化の次のステップとして「現場が主体」で動ける環境構築に適している。
2) AppSheet
Google LLC が提供するノーコードプラットフォーム。既存のスプレッドシートやクラウドデータを元に、モバイル・タブレット・Webアプリを素早く構築できます。
ポイント:
・Google Workspace など既存環境と親和性が高い。
・モバイル活用やフィールドワーク用途に強く、離れた拠点間でのデータ活用に向いている。
・ノーコードツール選定時、「モバイル第一」「データ接続が多様」という観点から検討対象に入れる価値あり。
3) Microsoft Power Apps
Microsoft Corporation の「Power Platform」ファミリーに属するローコード/ノーコードアプリ開発プラットフォーム。AIを活用したアプリ構築、データベース統合、モバイル対応など広範な機能を提供。
ポイント:
・企業の既存Microsoft 365/Azure環境と統合しやすく、エンタープライズ規模のDX推進に強み。
・セキュリティ・ガバナンス要件が高い組織にも対応可能だが、設定・運用の敷居は若干高め。
・「現場+IT部門」で共創する体制をもつ企業には特に効果的。
ノーコードが社会全体のDXを広げる
DXの本当の壁は“技術”ではなく“マインドセット”です。
行政もいま本気でノーコードに取り組み始めています。埼玉県の事例がまさにその象徴で、今後は全国の自治体に広がる流れが加速するでしょう。
特に中小企業にとって、ノーコードは “手の届くDX” です。
RPA、AI、データ分析──その前段階にあるのが、日々の業務をデジタルで回す基盤づくり。ここが変わらなければ、次のステージにはいけません。
まとめ:まずは一つ作る。そこからDXは動き始める
ノーコードの最大の価値は「すぐ始められること」。
難しく考える必要はありません。
あなた自身がエクセルでやっている面倒な作業を、まずひとつアプリにしてみる。たったそれだけで、組織の動き方は変わります。
DXはテクノロジーの話ではなく“姿勢”の話です。
現場が主役になり、気づき、学び、挑戦すること──その積み重ねが、確実な変革を生みます。
本日の内容が、あなたの「シンギュラリティ時代への準備」に向けた、わずかながらでも「気づき」や「次の一歩」のヒントになれたなら幸いです。
10年先の超知性ASIやAGIが当たり前になる未来に向けて、私たち自身をアップデートし続けることが、今最も重要です。
ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
「社員のDXマインドをどう高めるか?」、「実践的なITスキル教育が進まない」など、DX推進担当者の育成やIT教育研修でお悩みでしたら、ぜひ一度お聞かせください。
初回無料の「DX推進人材教育プログラム」コンサルティングにご応募いただければ、あなたの組織の課題解決に必ずお役に立ちます。
www.certpro.jp/dxconsulting/
生成AI導入を検討させている方は、こちらもご覧ください。
セキュリティから活用方法まで、サポートさせていただきます。
certpro-generationaiservice.sfsite.me/
次回の記事も、どうぞお楽しみに!
【スキルチェックリスト】
今日からあなたもDX推進に向け行動をチェックしてみましょう!
□ エクセルで困っている業務を書き出した
□ ノーコードツールを1つ触ってみた
□ 部署内でデジタル化の課題を共有した
□ 小さな業務改善をアプリ化してみた
□ DX推進の仲間を社内で見つけた
【キーワードの解説】
● ノーコード
プログラミングを記述せず、ドラッグ&ドロップなどの直感的操作でアプリを構築できる仕組み。従来のシステム開発は専門エンジニアが担当するため時間とコストが大きかったが、ノーコードは現場担当者が主体となり業務改善を実現できる点が最大の特徴。企業のDX推進において「最初の成功体験」を生みやすく、自走組織をつくる基盤として注目されている。
● DX(デジタル・トランスフォーメーション)
単なるデジタル化ではなく、デジタル技術を活用してビジネスモデル・業務・組織文化を変革すること。特に中小企業では、紙文化やエクセル依存から抜け出す段階が最も効果が大きい。ノーコードはその入口として機能し、現場が主体となる変革を後押しする。
● 業務の一元管理
複数の部署・拠点に散らばっている情報を、単一のクラウドアプリで管理すること。データの正確性向上、リアルタイム共有、意思決定の高速化につながる。ノーコードツールが得意とする領域で、DXの基盤となる考え方。
【著者紹介】
近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ 代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
・IoT検定制度委員会 事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
・一般社団法人 IT職業能力支援機構 理事長(Android資格)
・電気・電子系技術者育成協議会 副理事長(E検定)
・NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会 メンバー(組込み)
・ET教育フォーラム合同会社 代表(コンテンツ制作)
・経済産業省地方版IoT推進ラボ ビジネス創出事業メンター(IoT支援)
・経済産業省地域DX推進ラボ ビジネス創出事業メンター(DX支援)
・デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
・DX事業共同組合 設立理事(DX推進)
・一般社団法人日本サステナブルビジネス機構 幹事(SDGs認証)
・”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会 理事(DEI支援)
・アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)
・一般社団法人国際サイバーセキュリティ協会 事務局長(IACS認定)

