
【記事概要】
生成AIやデジタル化が急速に進む中で、企業や個人が持つ“データ”をどのように活用するかが、これからの競争力を左右します。近森満氏は「データ活用とは特別なスキルではなく、誰にでもできる日常の改善から始められる」と語ります。
本稿では、売上データ・アンケート・アクセス解析といった身近な数値を「定量データ」と「定性データ」に分けて可視化する方法を具体的にご紹介します。また、勘や経験に頼らない意思決定=データドリブン経営を実現するための考え方や実践法を、事例を交えてわかりやすく解説します。小さな店舗の仕入れ最適化から、SNSアクセス分析によるマーケティング改善まで、ツールに振り回されず成果を出すコツをお伝えします。AIエージェントが日常業務を支える時代に向け、今こそ“データを見る力”を磨くことが求められています。
本記事は、誰もが今日から実践できる「データ活用入門」として、デジタル社会を生き抜く第一歩をサポートする内容です。

【著者情報】
こんにちは。IT・DX教育サービスの株式会社サートプロの近森満です。
www.certpro.jp/blogs/dx_chikamori/
当社では「DX推進人材教育プログラム」として、初回無料のコンサルティングを提供しています。DX推進や人材育成についてのご相談をお待ちしています。
www.certpro.jp/dxconsulting/
誰でもできるデータ活用入門
デジタル時代において最も重要なテーマのひとつは「データをどう使うか」です。
AIや生成AIなどのテクノロジーが急速に進化する中で、「データ活用は専門家の領域」と思われがちですが、実はそうではありません。
私がこれまで数多くの現場でお伝えしてきたのは、「データ活用は誰にでもできる」ということです。なぜなら、企業の規模や業種に関係なく、売上表やアンケート結果、アクセス解析などの“身近な数字”を少し工夫して見るだけで、経営の意思決定に使える情報が見えてくるからです。
たとえば、日々の売上やサイトの訪問者数、顧客満足度アンケートの傾向などをグラフ化してみると、「何が伸びているのか」「どこが課題なのか」といった流れが見えてきます。この「気づき」こそが、データ活用の第一歩です。
データを「見える化」する意味
「データドリブン経営」という言葉を耳にされた方も多いと思います。
これは、勘や経験、度胸(いわゆるKKD)に頼らず、客観的なデータに基づいて意思決定を行う経営手法です。
しかし、実際には多くの企業が「前例主義」から抜け出せずにいます。
データとは、過去の出来事を記録したものですが、過去の中には未来のヒントが必ずあります。
そのヒントを見える形にする「可視化」が、データ活用の最大の鍵なのです。
データには大きく分けて「定量データ」と「定性データ」があります。
・定量データ:
売上、評価点、件数など数値で表せる情報
・定性データ:
顧客の声、自由記述、レビューなど言葉で表現される情報
この2つを組み合わせることで、数字だけでは見えなかった本質的な課題を把握できます。
事例:クレームレポートを宝のデータに変える
ある製造企業では、長年「クレーム報告書」を“問題の記録”として扱っていました。
しかし、数百件のレポートを分析してみると、「取扱説明書がわかりにくい」「操作方法の誤解が多い」といった共通点が見えてきました。
そこで企業は、説明書をわかりやすく改訂し、補足動画を導入しました。結果として問い合わせ件数が半減し、顧客満足度も大きく上がりました。
このように、定性データには“顧客の感情”が隠れています。
数字の背景にある声を丁寧に拾い上げて言語化し、全社員で共有することで、組織のマインドまで変わっていくのです。
「見える化」が生み出すスピードと精度
数字をただ並べるだけでは、なかなか人の行動は変わりません。
しかし、グラフや図表などで直感的に把握できるようにすることで、理解が早まり、判断のスピードも精度も高まります。
たとえば、小売店では、天候データと売上データを組み合わせることで、在庫の最適化を実現しました。
「今日は雨が降りそうだから傘を20本出そう」といった勘頼みではなく、「過去の雨天時の販売データから今日は100本が適正」と数値で判断する。
これこそがデータドリブン経営の実践です。
データ分析の最初の一歩
データ分析と聞くと、「難しそう」「統計の知識が必要」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、最初のステップはとてもシンプルです。
まずは、仮説を立てて小さな改善を試してみること。
たとえば週に一度、アクセス解析で「どの記事が読まれているか」を確認するだけでも構いません。数字を見て改善を繰り返すうちに、成果が少しずつ見えてきます。
私自身も自社サイトのブログを見直し、コンサルタントのアドバイスを受けて構成を修正しました。その結果、アクセス数が伸び、問い合わせ件数も増加しました。
数字を見ることは、改善の起点になるのです。
事例:中小企業の「データ活用リテラシー」改革
地方の中小企業では「デジタルは苦手」「ITは難しい」という声をよく聞きます。
しかし、売上や顧客データを可視化するだけで、社内の会話が変わります。
「今週はどの商品が伸びた?」「どの顧客がリピートしている?」
社員同士がデータをもとに議論することで、勘ではなく“事実”に基づいた判断ができるようになります。
データ共有は、会社全体の「共通言語」を作ることでもあります。
その積み重ねが、チーム全体の意識改革につながるのです。
AIエージェントが日常業務を支える時代に
これからの時代、AIは単なるツールではなく、ビジネスのパートナーになります。
朝起きたときにスマートフォンに「昨日の売上報告」「サイトのアクセス推移」「顧客満足度の変化」が自動的に届く――そんな仕組みが現実になりつつあります。
ただし、AIがどれだけ優秀でも、それを活かす「人の理解と判断力」がなければ、真価は発揮できません。
つまり、AI時代に求められるのは、人間のマインドセットなのです。
マインドセットとリスキリングの重要性
「自分はアナログ人間だから」「今さら学んでも」と感じる方も多いかもしれません。
しかし、DX推進の第一歩は、マインドを変えることです。
学び直し(リスキリング)は、未来への投資です。
AIやデータ分析、生成AIなどの知識を少しずつ取り入れていくことで、仕事の質やキャリアの選択肢が大きく広がります。
退職金を支払うより、学び直しの機会を提供する方が、企業にとっても人にとっても価値があるのです。
私が全国の企業を支援して感じるのは、「学び直した社員がチームを変えていく」という事実です。
スキルは道具、使う人の意識が未来をつくります。
まとめ:データを味方につける経営へ
データは、あなたの行動を支える“静かなナビゲーター”です。
過去を学び、今を見つめ、未来を描く――この循環がデータ活用の本質です。
データを味方につけることで、組織は変わり、個人も成長します。
それこそが、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の真の目的なのです。
本日の内容が、あなたの「シンギュラリティ時代への準備」に向けた、ささやかな気づきになれば幸いです。
これからの10年、超知性AI(ASI)や汎用AI(AGI)が当たり前のように存在する時代になります。
だからこそ、私たち自身をアップデートし続けることが大切です。
DX推進や人材育成でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
初回無料の「DX推進人材教育プログラム」コンサルティングで、あなたの組織に最適な学びの仕組みをご提案いたします。
www.certpro.jp/dxconsulting/
生成AI導入を検討させている方は、こちらもご覧ください。
セキュリティから活用方法まで、サポートさせていただきます。
certpro-generationaiservice.sfsite.me/
次回の記事も、どうぞお楽しみに。
【スキルチェックリスト】
今日からあなたもDX推進に向け行動をチェックしてみましょう!
□ 自社のデータ(売上・顧客・アクセス)を毎週確認している
□ 数字だけでなく顧客の声(定性データ)も分析している
□ データの可視化ツール(グラフ・ダッシュボード)を活用している
□ チームでデータを共有し、意思決定に反映している
□ 新しいデジタルスキルを学ぶリスキリング計画を立てた
【キーワードの解説】
データドリブン経営
データドリブン経営とは、勘や経験に頼らず、客観的なデータをもとに意思決定を行う経営手法のこと。売上・アクセス解析・顧客アンケートなど、あらゆる情報を数値化し、グラフやダッシュボードで可視化する。これにより、経営者や現場の判断スピードが向上し、根拠ある戦略が立てられる。AIやBIツールの普及により中小企業でも実践可能となり、データを活用できるか否かが競争力の差を生む時代になっている。
定性データと定量データ
定量データは「数値で表せる情報」(売上、件数、スコアなど)であり、定性データは「人の感情や意見」(口コミ、自由記述、行動観察など)を指す。両者は対立する概念ではなく、補完し合う関係にある。定量データは傾向を把握するのに強く、定性データは原因や背景を探るのに適している。両方を組み合わせることで、より深い洞察が得られ、顧客理解や改善施策の精度が高まる。
リスキリング(Reskilling)
リスキリングとは、変化の激しい時代に対応するために、既存のスキルを再構築し、新しい分野の知識を学び直すこと。デジタル・トランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、AI・データ分析・プログラミング・マインドセットなどの分野でリスキリングの必要性が急速に高まっている。企業は学習支援制度を通じて社員の再教育を推進することで、生産性の向上と人材流出の防止を図っている。
【著者紹介】
近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ 代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
・IoT検定制度委員会 事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
・一般社団法人 IT職業能力支援機構 理事長(Android資格)
・電気・電子系技術者育成協議会 副理事長(E検定)
・NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会 メンバー(組込み)
・ET教育フォーラム合同会社 代表(コンテンツ制作)
・経済産業省地方版IoT推進ラボ ビジネス創出事業メンター(IoT支援)
・経済産業省地域DX推進ラボ ビジネス創出事業メンター(DX支援)
・デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
・DX事業共同組合 設立理事(DX推進)
・一般社団法人日本サステナブルビジネス機構 幹事(SDGs認証)
・”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会 理事(DEI支援)
・アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)
・一般社団法人国際サイバーセキュリティ協会 事務局長(IACS認定)


