
【記事概要】
「余剰人口から関係人口へ」というテーマを軸に、近森満氏がAI時代における“人の役割”の再定義と、“人と人”のつながりを軸とした新たな社会基盤構築について提言する内容です。AIがインフラ化し、個々の業務を肩代わりする中で、人間の仕事量は減少し、「余った人材=余剰人口」が生まれるという懸念があります。これに対し近森氏は、「余剰」ではなく「関係」というキーワードに着目し、AI時代にこそ、人と人のネットワークや感情的つながりが新たな価値を生むと説きます。具体的には、ふるさと納税による地域貢献、雪かきのような“人の力技”が求められる場面の重要性、そしてマインド・トランスフォーメーションの必要性を語り、社会的役割を再発明するヒントを提示しています。生成AI時代における人間の存在意義や新たなキャリアの方向性に関心のある読者に対して、共感と実行可能な行動を促す記事構成となっています。
【本文】
こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ 近森満です。
www.certpro.jp/blogs/dx_chikamori/
当社では「DX推進人材教育プログラム」として初回無料のコンサルティングを提供しています。DX推進や人材育成のご相談をお待ちしています。
www.certpro.jp/dxconsulting/
余剰人口という誤解、AI時代の新しい価値創造
「AIに仕事を奪われる」。そんな言葉を聞いたことはありませんか?
生成AIの進化により、文章作成やプログラミング、資料作成までもが自動化されつつある現代。確かに、これまで10人で担っていた作業をAIが5人分肩代わりするなら、単純計算で5人が「余る」ことになります。これを「余剰人口」と呼ぶのであれば、社会にとっては深刻な問題かもしれません。
しかし、本当に“余る”のでしょうか? それは違うと私は考えます。
むしろ、AIが“肩代わりしてくれるからこそ”、私たち人間は「別の役割」に時間とエネルギーを注げるようになる。その“別の役割”こそが、「関係人口」というキーワードで示されるのです。
関係人口という新たな社会インフラ
そもそも「関係人口」とは、住民でも観光客でもない、地域と何らかのつながりを持ち、持続的に関わる人々を指す言葉です。近年、ふるさと納税や地域ボランティア、オンラインコミュニティ活動などを通じて、この“第三の人口”が注目されています。
AIが加速度的に業務を自動化する中、ますます重要になるのが人間同士の「関係性」です。
事例:地域のコミュニケーション
AIにはできないことがあります。お年寄りの家の雪下ろしや、災害時の避難誘導、心のこもった対話や共感は、まだまだ人間の“力技”です。そして、こうした「人間ならではの価値」が新たな社会的役割を創り出すのです。
生成AIの進化がもたらす構造転換
ChatGPTをはじめとした生成AIの登場は、これまでの「道具としてのAI」から、「共存するパートナーとしてのAI」への進化を意味します。生活のあらゆる場面に入り込んだAIは、インターネットや電気・水道のように、もはや社会インフラと呼べる存在となっています。
つまり、私たちは今、「AIを活用して成果を出す時代」から、「AIによって時間的・精神的余裕を得て、新たな関係や役割を創造する時代」に突入しているのです。
この変化を恐れるのではなく、むしろ前向きに受け入れ、活用しなければなりません。
事例: ふるさと納税と地域への新しい関わり方
ふるさと納税は、関係人口の代表的な事例です。かつては「観光に行く」「定住する」ことが地域貢献の前提でした。しかし今や、都市に住みながらでも、自分の出身地や応援したい地域に貢献できる仕組みが整っています。
これは単なる税金の移転ではありません。「地域と自分との関係性」が可視化され、さらに深化していくプロセスなのです。
シェアと人間関係が生み出す価値とは
AIが生産性を飛躍的に高める一方、人間には「余白」が生まれます。この余白をどう使うか。それがこれからの社会における“問い”です。
ここでキーワードになるのが、「人と人のシェア」。
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スキルのシェア
自分の技術を地域やコミュニティに役立てる -
時間のシェア
空いた時間をボランティアや副業に活用する -
感情のシェア
共感や励ましが人を救う時代に
人間関係を“価値創造の源泉”とする考え方が、DXの延長線上で再定義されようとしています。

AIと共に歩む新しい働き方とマインドチェンジ
「AIに仕事を奪われる」のではなく、「AIに仕事を委ねて、自分は次のステージへ進む」というマインドセットが求められます。
たとえば、雪国での「雪下ろし」。これをAIが完全に代替するにはまだ時間がかかるでしょう。高齢者の生活を守るには、人の手が必要なのです。では、時間的余裕のある人がそれを担えばどうでしょうか?
「お金にならないからやらない」ではなく、「社会に貢献するために行う」。その発想の転換が、新たな価値を生み出します。
これは私がよく言う「マインド・トランスフォーメーション」の実践にほかなりません。
事例: 一人ユニコーンの時代とシェアの再定義
AIがすべての業務を支援することで、「一人でユニコーン企業を作れる時代が来る」と言われています。かつて100人で作っていた仕組みを、一人の人間とAIで創れるとしたら?
そのとき、残りの99人は“不要”になるのでしょうか?
いいえ、違います。
「一人ユニコーン」が構築した仕組みに、99人が関係人口として参加することで、新たな生態系が生まれる。それが、これからの「関係人口シェア社会」の姿なのです。
教育と育成:人間力を軸にしたリスキリングの時代
このような社会変化に適応するには、スキルチェンジやリスキリングが不可欠です。特に「デジタル3兄弟(DX、AI、IoT)」と「マインド3姉妹(マインドセット、マインドチェンジ、マインド・トランスフォーメーション)」の両輪で学び直す姿勢が求められます。
生成AI時代には、単なるスキルよりも「変化に適応する力」「他者とつながる力」「共感し行動する力」が重要になります。これは技術的なスキルセットだけではなく、人間力を育む教育と環境整備がカギになるのです。
まとめ:人の価値は「つながり」で再定義される
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仕事が減ること=価値が下がる、ではない
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AIによって生まれた余白を、新しい関係性の創出に使う
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関係人口としての役割に目を向ける
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AIができない「人の力技」にこそ社会的価値がある
こうした考え方を受け入れ、実践することで、私たちはAI時代を前向きに生き抜く術を手に入れられるのです。

さいごに
「余っている」のではありません。「つながる場が足りていない」のです。
人間は「関係性の生き物」です。生成AIやAGI、ASIがどれほど進化しても、共感・協力・つながりは人間固有の力であり、未来を創るエンジンです。
だからこそ、余剰人口ではなく「関係人口」へ。
そのためにまずは、「シェアの第一歩」を踏み出してみましょう。
地域活動に参加してみる。SNSで自分のスキルをシェアする。社内でのAI活用のナレッジを共有する。どんな小さなことでも、「人と人の関係性」が育まれる場は、未来を照らす“種”になります。
いかがでしたでしょうか?
すこしでもみなさまの気づきになれたのであれば幸いです。
DX推進担当者の育成やIT教育研修でお悩みがあれば、ぜひ初回無料のコンサルティング「DX推進人材教育プログラム」にご応募ください。かならずお役に立ちます。
ではまた。
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【キーワードの解説】
関係人口
関係人口とは、特定の地域に「住んでいない」「一時的に訪れている」わけではないが、その地域と何らかの形で持続的な関わりを持つ人々を指します。ふるさと納税やボランティア活動、地域での副業・兼業、リモートワークによる関与など、多様な形で「関係」を構築することが可能です。AI時代には、物理的な居住地よりも「人的ネットワーク」や「社会的つながり」に価値が生まれ、関係人口の概念がより重要になっています。
マインド・トランスフォーメーション
マインド・トランスフォーメーションとは、単なる知識やスキルの習得を超え、自己認識、価値観、行動様式を根本から転換させる「意識の進化」を意味します。変化の激しいDX時代においては、変化に対応する柔軟性・多様性・共創性が必要不可欠です。AIに仕事を奪われるという恐れではなく、「共に働くための思考様式」へ転換するための概念です。
超知性リテラシー
超知性リテラシーとは、AGI(汎用人工知能)やASI(超知能)など、人間の能力を超えた知性と向き合うために必要な理解力・倫理観・判断力を指します。単にAIを“使いこなす”技術ではなく、AIと“共存する”ための価値判断、意思決定、協働の在り方を考えるための次世代リテラシーです。
【著者紹介】
近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ 代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
・IoT検定制度委員会 事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
・一般社団法人 IT職業能力支援機構 理事長(Android資格)
・電気・電子系技術者育成協議会 副理事長(E検定)
・NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会 メンバー(組込み)
・ET教育フォーラム合同会社 代表(コンテンツ制作)
・経済産業省地方版IoT推進ラボ ビジネス創出事業メンター(IoT支援)
・経済産業省地域DX推進ラボ ビジネス創出事業メンター(DX支援)
・デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
・DX事業共同組合 設立理事(DX推進)
・一般社団法人日本サステナブルビジネス機構 幹事(SDGs認証)
・”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会 理事(DEI支援)
・アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)
・一般社団法人国際サイバーセキュリティ協会 事務局長(IACS認定)
