
【記事概要】
第四次産業革命とSociety 5.0の違い、そしてこれから訪れる第五次産業革命とは何かについて、近森満氏が語る本稿では、第四次産業革命(インダストリー4.0)がドイツ発の産業構造変革であるのに対し、Society 5.0は日本政府が提唱した人間中心の社会ビジョンであることを明確に区別して説明しています。また、今後到来が予想される第五次産業革命については、テクノロジーと人間の共生、パーソナライズ、エシカル経済といった新たな価値基準を軸に、「人間回帰」をキーワードとした社会変革が進むことが予測されます。生成AIやAGI/ASIなど超知性技術が進展する中で、どのようにして人間らしさを保持し、新しい社会の構築に挑むのかという問いが投げかけられています。産業革新と社会ビジョンのズレを乗り越え、より持続可能で幸福な未来をつくるために、今私たちはどう変化するべきかを問う一篇です。

【本文】
第四次産業革命とSociety 5.0の違い、そしてその先にある「第五次産業革命」の真の姿とは何か?
こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ 近森満です。
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当社では「DX推進人材教育プログラム」として初回無料のコンサルティングを提供しています。DX推進や人材育成のご相談をお待ちしています。
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「第四次産業革命」とは何か?
第四次産業革命とは、インダストリー4.0として2011年にドイツから提唱された概念に端を発します。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、ロボティクス、サイバー・フィジカル・システム(CPS)といった先端技術を、産業構造全体に取り込むことで生まれた「スマート化」の流れです。

日本では2015年から2016年にかけてこの考え方が注目され、経済産業省がIoT推進ラボ、総務省がIoT推進コンソーシアムを設立するなど、政府レベルでも取り組みが本格化しました。特にドイツと日本、アメリカと日本の、それぞれ2カ国間では、メモランダム・オブ・アンダースタンディング(MOU)を締結し、技術革新とグローバルな産業協調の枠組みが形成されました。
技術的には、機械とネットワークが連携する「CPS(Cyber Physical Systems)」が中心的役割を担い、仮想空間と現実世界がリアルタイムで接続される仕組みです。空力設計やシミュレーションの例でも示されるように、仮想空間での設計・検証を通じて、より効率的かつ柔軟な製造プロセスが可能になったのです。
第四次産業革命の本質は、「効率化」「自動化」「デジタル化」の推進であり、まさに「技術中心」の進化といえるでしょう。

「Society 5.0」とは何か?
一方で、Society 5.0は日本政府が2016年に提唱した未来社会のビジョンであり、ドイツ発のインダストリー4.0とは全く異なる起源と目的を持ちます。
Society 5.0は、狩猟社会(1.0)、農耕社会(2.0)、工業社会(3.0)、情報社会(4.0)に続く「第5の社会」として定義され、「人間中心の超スマート社会(ヒューマン・セントリック・ソサエティ)」を目指しています。

高齢化や過疎化、災害対応、教育格差、地域経済の衰退など、社会課題の解決をテクノロジーによって実現しようとするのがSociety 5.0の根幹です。内閣府が主導し、経産省や総務省が支援する形で、日本全体を横串で貫く社会ビジョンが示されたのです。
「第四次産業革命」と「Society 5.0」の違い
両者は同時期に語られているため混同されがちですが、
- インダストリー4.0=技術革新の波
- Society 5.0=社会変革のビジョン
という違いがあります。
インダストリー4.0は世界的に共有された産業変革モデルであり、Society 5.0は日本独自の社会構想です。前者は「工業・製造業」を軸に、後者は「社会と人間の幸福」に焦点を当てています。
また、省庁のスタンスにも違いがあります。経産省が中心となって「産業・企業支援」に力を入れるのに対し、内閣府は「国民全体の生活基盤」を意識した施策を推進しています。
「第五次産業革命」はもう始まっているのか?
では、今注目されている「第五次産業革命」とは何か?これはまだ明確な定義が確立していない段階にあります。とはいえ、経済産業省では一部で「バイオテクノロジーによる産業革命」などが言及され始めています。
しかし、より大きな潮流としては、
- 「人間とテクノロジーの共生社会」
- 「サステナブルな幸福社会」
- 「個別最適化されたパーソナライズ社会」
といった新しい概念が浮かび上がってきています。
今や、AIは進化を続け、汎用人工知能(AGI)、さらには超人工知能(ASI)というステージに足を踏み入れようとしています。「第四次産業革命」から「第五次産業革命」へのシフトは、「効率性から人間性」への転換だと言えるでしょう。

人間中心の社会構造への移行
第五次産業革命では、技術が支配するのではなく、人間が技術と共生する社会が求められます。具体的には、介護ロボットやパーソナルAIアシスタントが人間を支援し、身体的・精神的負荷を軽減するような設計が求められています。
ヒューマン・マシン・インタラクションの新しい形として、「共働ロボット」「エシカルAI」などが注目されています。これはまさに「人間中心設計(Human-Centered Design)」の応用に他なりません。
生成AI・AGI・ASIが導く「超知性社会」
生成AIは既にビジネスの現場で使われ始めており、文書作成、画像生成、予測分析といったタスクに革命をもたらしています。今後、AGIやASIの登場により、知的労働そのものの再定義が求められることになるでしょう。
このとき大切なのは、「AIがどれだけ賢くなるか」ではなく、「人間がどれだけ適応できるか」です。技術が人間を置き去りにするのではなく、共に進化するためのリテラシー教育と倫理的設計が重要になります。
個人化・価値ベース社会へのシフト
第五次産業革命のもう一つの特徴は、「マスからパーソナルへ」という潮流です。大量生産・大量消費から、個人の嗜好やニーズに合わせたパーソナライズ製品・サービスへと移行しています。
さらに、環境・倫理・地域への配慮が加味された「エシカル消費」「エシカル経済」も進展しています。これはSDGsとの高い親和性を持ち、企業経営の方向性も「資本」から「価値」へとシフトしていることを示しています。
まとめ(企画書のネタ):第五次産業革命の正体
第五次産業革命とは、「技術革新×人間回帰×サステナビリティ」という三位一体の価値変革です。
それは単なる技術的アップデートではなく、社会構造・個人の価値観・企業の経営姿勢に至るまで、すべてを見直し、再設計するイノベーションの総体です。
企業にとっては、「効率化」だけでなく「共創と幸福の創出」に向けたビジョンを持つことが問われており、個人にとっては、自分のライフデザインやキャリアを再定義する必要がある時代なのです。
さいごに
「第四次産業革命」は技術による効率化の時代、「Society 5.0」は社会課題解決のビジョン、そして「第五次産業革命」は人間と技術の共生により、幸福な未来社会の実現を目指す挑戦です。
その変化の中で、あなた自身のマインドセットも、キャリア設計も変わらなければなりません。
変化を恐れず、進化を受け入れ、共に未来を創りましょう。
いかがでしたでしょうか?
すこしでもみなさまの気づきになれたのであれば幸いです。
DX推進担当者の育成やIT教育研修でお悩みがあれば、ぜひ初回無料のコンサルティング「DX推進人材教育プログラム」にご応募ください。かならずお役に立ちます。
ではまた。
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キーワードの解説
第四次産業革命
第四次産業革命とは、IoT、AI、ビッグデータ、ロボティクス、クラウドなどの先進的デジタル技術によって、産業構造全体が根本から変わる時代を指します。2011年にドイツが提唱した「インダストリー4.0」がその源流であり、従来の自動化に加え、サイバー・フィジカル・システム(CPS)の導入によって、製造業だけでなく物流、医療、教育など多くの分野で変革が進んでいます。
Society 5.0
Society 5.0とは、日本政府が2016年に打ち出した未来社会のビジョンで、「人間中心の超スマート社会」を実現することを目的としています。狩猟・農耕・工業・情報社会に続く第五の社会とされ、テクノロジーを活用して社会課題を解決し、誰もが快適に暮らせる持続可能な社会の構築を目指します。SDGsとの高い親和性も特徴です。
第五次産業革命
第五次産業革命は、まだ定義の過渡期にある概念ですが、生成AIやAGI/ASIの台頭を背景に、テクノロジーと人間の「共生」を中心とする社会構造の再設計が鍵となります。個別最適化(パーソナライゼーション)やエシカル経済、ウェルビーイングの重視など、人間の幸福とサステナビリティの両立を目指す価値転換が進行中です。
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【音声配信】
※音声収録のポッドキャストではテキストには載っていない㊙話も。
ぜひ、ものは試しに聴いてみてください。
『近森満のDX企画書のネタ帳』:
【著者紹介】
近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ 代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
・IoT検定制度委員会 事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
・一般社団法人 IT職業能力支援機構 理事長(Android資格)
・電気・電子系技術者育成協議会 副理事長(E検定)
・NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会 メンバー(組込み)
・ET教育フォーラム合同会社 代表(コンテンツ制作)
・経済産業省地方版IoT推進ラボ ビジネス創出事業メンター(IoT支援)
・経済産業省地域DX推進ラボ ビジネス創出事業メンター(DX支援)
・デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
・DX事業共同組合 設立理事(DX推進)
・一般社団法人日本サステナブルビジネス機構 幹事(SDGs認証)
・”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会 理事(DEI支援)
・アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)
・一般社団法人国際サイバーセキュリティ協会 事務局長(IACS認定)