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生成AI時代のマルチタスク思考とは?人間の“シリアル処理”とAIの“パラレル処理”の違いを理解しよう!

2025年5月19日
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【記事概要】

生成AIが社会やビジネスのあらゆる場面に浸透しつつある中で、「人間のマルチタスク思考」の再定義が求められています。本稿では、AIと人間の認知的処理の違い、すなわち人間の“高速なシリアル処理”とAIの“真のパラレル処理(並行処理)”との対比を軸に、生成AI時代に必要な思考様式の転換を提起します。人間が担うべきは、タスクの統合・判断・設計という上位階層であり、AIが複数の業務を同時並行的にこなす“実行機”として機能する時代には、私たちのマインドセットやスキルセットの更新が不可欠です。特に階層構造の設計力とフロー制御能力こそが、人間の本質的な価値となることを強調し、DX時代の「編集中核人材」としてのあり方に迫ります。日常業務を見直す視点を得たいDX推進担当者、人材戦略にAI活用を取り入れたい技術人事にとって、思考のアップデートにつながるヒントが詰まった内容です。

【本文】

生成AI時代のマルチタスク思考とは?
こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ 近森満です。
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当社では「DX推進人材教育プログラム」として初回無料のコンサルティングを提供しています。DX推進や人材育成のご相談をお待ちしています。
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マルチタスク思考は幻想か?

「自分はマルチタスクが得意だ」と語る人は少なくありません。しかし、果たしてそれは本当の意味での“同時並行処理”なのでしょうか?
生成AIの登場により、私たちが信じてきたマルチタスク能力が、実は「高速なシリアル処理(逐次処理)」でしかなかったという事実が明らかになりつつあります。私たちは「複数のことを同時にやっている」と思い込んでいるだけで、実際には注意の切り替えを高速で行っているに過ぎないのです。

たとえば、ブラウザのタブを50個開いて情報収集している様子は、まるで「マルチタスク」のように見えます。しかし実際は、ひとつずつタブを切り替えて処理しているだけ。タスク同士が真に並列で実行されているわけではないのです。

生成AIとの決定的な違い

では、生成AIが持つ「マルチタスク」とは何が違うのでしょうか?

人間の処理は、「高速なシリアル処理」。一つの作業を終えたら次に移る。だからアウトプットには時間がかかります。一方で、AIは完全な「並行処理」が可能です。つまり、複数のプロンプトを同時に走らせて、それぞれ別のタスクを並列に処理できる。

人間:主にシリアル処理だが、単純タスクや無意識的処理では並列性がある。
AI:高度な並列処理が可能だが、「完全」ではない場合もある。

ファクトチェック@Grok

これこそが、生成AIと人間の根本的な違いです。タスクの数が増えれば増えるほど、AIは強くなりますが、人間は処理の切り替え頻度が増えて脳の疲労も増していく。ここに、「人間の役割の再定義」が必要となる理由があります。

事例: Chromeタブが50枚!?

たとえば私自身、Google Chromeのタブを大量に開いて情報を処理していた時期があります。しかし実際には、CPUが重くなって処理能力が落ちるばかり。思い返せば、「処理しているつもり」になっていたに過ぎませんでした。この経験が、AIによる「真の並列処理」との違いを痛感した原体験です。

マルチタスクの階層モデル

では、生成AI時代において人間はどのような思考構造を持つべきなのでしょうか?
私はそれを「階層型マルチタスク構造」と呼んでいます。以下の4つのレベルで考えるとわかりやすいでしょう。

  • レベル1:目的階層
    KPIや目標の定義。ここは完全に人間が設計します。戦略的思考と意思決定の領域。
  • レベル2:プロジェクト階層
    目的に向けて複数のプロジェクトやタスクを並行に設計。ここも人間が担います。ここまでが「高次マネジメント領域」。
  • レベル3:作業階層
    設計されたタスクの実行。人間とAIの協働領域。具体的な指示とその監視を人間が行いながら、実行はAIに任せる部分も出てきます。
  • レベル4:自動処理階層
    完全にAI・RPAが担う領域。資料作成、リサーチ、要約、データ処理などは、AIが代替します。

この4階層モデルにより、どこに人間の思考リソースを集中させるべきかが明確になります。
人間が担うべきは「統合設計と意思決定」、AIが担うべきは「実行と補助」です。

AGI・マルチエージェントとの共進化

今後、AGI(汎用人工知能)や複数のAIエージェント(MCP: Multi-agent Cooperative Processing)の実用化が進むにつれて、AI同士が連携し、複雑なマルチタスクを分担しながら自律的に処理する世界がやってきます。

この時代に、人間がやるべきは「タスクの設計」と「出力物の選択・判断・統合」。つまり、編集者・ディレクター型のスキルが求められるようになるのです。

事例: 書籍編集者に学ぶ

出版社の編集者は、企画立案から執筆者選定、原稿管理、校正、販売戦略、プロモーションまでを統括します。AI時代の人間の役割は、まさにこの編集者型モデル。AIという“執筆者”から原稿を受け取り、品質を確認し、統一感をもたせ、価値のある成果物へと導く存在になるのです。

シリアル処理とフロー制御こそ人間の武器

AIが並列処理で効率性を発揮する一方で、人間には「論理的な階層構造の設計」や「最終判断という意志決定力」があります。この2つを支えるのが、シリアル処理能力フロー制御能力です。

AIの出力を並べるだけでは価値になりません。必要なのは、どの順序で処理を流し、どこで止め、どのように合流させるかという“流れのマネジメント”。これができる人材こそ、AI時代に活躍する「超知性リテラシー」の持ち主です。

DX時代のマインドセットとスキルチェンジ

これからのDX人材に求められるのは、「実行者」から「選択・編集・統合・判断者」へのシフトです。マインドセットも、職人的なこだわりから、柔軟なプロンプト活用やタスク設計力へと進化させていく必要があります。

特に以下の3つの力が求められます。

  • プロンプト設計力
  • AIアウトプットの評価力
  • 階層構造を見抜くメタ認知力

これらは従来の職業訓練では身につかない領域であり、リスキリングやeラーニング、実務OJTなどの場で育成していく必要があります。

まとめ(企画書のネタ):AIと並走する人間の「編集思考」

生成AIが台頭する今、人間に求められるのは「編集思考」です。つまり、AIの出力をいかに設計し、整えて、意図あるアウトプットにまとめあげるか。編集者、プロデューサー、ディレクターといった立場に通じるスキルが不可欠になります。

そのために必要なのは、ただの作業能力ではなく、構造的思考とシステム設計能力。いま目の前のタスクをこなすだけでなく、「この仕事をどうAIに割り振り、どこで自分が判断すべきか?」を常に設計できる力です。

さいごに

AIが進化するからこそ、私たちはより“人間らしい”力を問われます。複雑な判断、文脈の理解、目的の再定義、そして何より「最終的な意思決定」。

この変化に対応するには、マインドチェンジスキルチェンジが不可欠です。生成AIを敵と捉えるのではなく、協働するための“チームメイト”として迎え入れる視点が大切です。

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いかがでしたでしょうか?
すこしでもみなさまの気づきになれたのであれば幸いです。
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ではまた。
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【音声配信】

※音声収録のポッドキャストではテキストには載っていない㊙話も。
ぜひ、ものは試しに聴いてみてください。
最近ビデオポッドキャストを始めましたので映像でもどうぞ!

【著者紹介】

近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ 代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
IoT検定制度委員会 事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
一般社団法人 IT職業能力支援機構 理事長(Android資格)
電気・電子系技術者育成協議会 副理事長(E検定)
NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会 メンバー(組込み)
ET教育フォーラム合同会社 代表(コンテンツ制作)
経済産業省地方版IoT推進ラボ ビジネス創出事業メンター(IoT支援)
経済産業省地域DX推進ラボ ビジネス創出事業メンター(DX支援)
デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
DX事業共同組合 設立理事(DX推進)
一般社団法人日本サステナブルビジネス機構 幹事(SDGs認証)
”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会 理事(DEI支援)
アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)

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