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【前編】AIに仕事を奪われるけどIT人材は不足している矛盾

2025年5月7日
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【目次】

  1. AIに仕事を奪われるのか、それとも人手が足りないのか?
  2. AIが代替するのは「作業」、残るのは「仕事」
  3. 「ジピタくんがやりました」では済まされない
  4. スキルの質と変化スピードのギャップ
  5. AIが生むのは“淘汰”ではなく“拡張”
  6. 「超知性リテラシー」と「マインドセットの刷新」
  7. 未来を自らの手に取り戻す行動
  8. まとめ:AIと人間の役割分担から逆算するDX推進戦略

 

【記事概要】

AIに仕事を奪われるといった不安が広がる一方で、IT人材は慢性的に不足している――この矛盾に真正面から向き合い、「AIに仕事を奪われる」という言説の本質を分解しながら、近森満がDX時代の人材戦略に光を当てます。

本記事では、AIに代替されるのは現時点では仕事の中の単純作業やテンプレート業務であり、「仕事=成果責任を伴う意思決定と対人関係」の本質は人間に残ることを論じます。

また、生成AIの普及が逆に“関係人口”を増やし、新たな職業や役割が次々に生まれている現状を紹介し、AIは奪うのではなく“仕事の再編成”をもたらすパートナーであるという考えを提示します。

さらに、プロフェッショナルとしての価値を高めるために求められる「マインドセットの変化」や、今後必要とされる「超知性リテラシー」「スキルセットの拡張」などについても具体例を交えつつ解説。リスキリングとスキルチェンジによるキャリアの再構築が必要である理由を、現場の声や実例を交えてわかりやすく整理します。

 

【著者情報】

こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ 近森満です。
www.certpro.jp/blogs/dx_chikamori/

当社では「DX推進人材教育プログラム」として初回無料のコンサルティングを提供しています。DX推進や人材育成のご相談をお待ちしています。
www.certpro.jp/dxconsulting/

 

 

AIに仕事を奪われるのか、それとも人手が足りないのか?

―――矛盾する未来予測が突きつける問い―――

「AIに仕事を奪われる」という警鐘が鳴り響く一方で、現実には「IT人材が不足している」という報道も絶えません。この2つの事象は明らかに矛盾して見えますが、果たしてそれは本当に矛盾なのでしょうか?

2023年から急速に普及した生成AIは、まるで“黒船”のごとく、業務効率化を推進する力として企業や現場に押し寄せてきました。ChatGPTのようなツールが登場して以降、数ヶ月~数年かかっていた作業が数分で完了するようになったという声は、もはや特別な話ではありません。

「こんなにしんどい仕事なら、むしろAIに奪ってほしい」

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「でも、自分の仕事が本当に要らなくなるのでは?」

こうした感情の揺れ動きが、多くの現場に見られます。しかしここで重要なのは、「仕事を奪う」とは具体的に“何を”指しているのかという点です。

 

 

AIが代替するのは「作業」、残るのは「仕事」

AIは確かに定型的な事務作業や、ルーチンワークを高速かつ正確に代替してくれます。これはとてもありがたいことです。私も毎日、生成AIを活用していますし、むしろ奪ってくれと言いたいぐらいです。

しかし、「作業」と「仕事」は違うのです。

仕事とは「成果責任を伴う意思決定と対人関係」が絡むものです。顧客との信頼構築、意思決定、リスクの引き受け――これらはすべて人が担っています。

例えば、AIがPowerPointでスライドを作ってくれたとしても、その資料が本当に「相手の心を動かす」プレゼンテーションになるかは、使い手次第です。生成AIが生成した「それっぽい」コンテンツを見抜くのは、プロであればあるほど容易です。結果として、「AIで作ったものを人が仕上げる」スタイルが主流になっているのです。

結果は本人かAIはかは、先方には関係ないといえば無いでしょう。

もっと言うと、これからはAIが作成すること前提でプレゼンが行われていくでしょう。
「それ、AIで作ったよね?」ではなく「AIで作らなかったの?」
「AIだったら安心だね」かもしれません。

 

 

「ジピタくんがやりました」では済まされない

―――仕事の責任は人間が持つ―――

音声内で話題に上がった「ジピタくん」――これはChatGPTの愛称のようなものですが、「これはジピタくんが作ったものです」と言って仕事を提出しても、顧客は納得しません。

生成AIがいかに優秀であっても、最終的な責任は人間が負うのです。これは、生成AIが生み出す“仮の成果物”を、ビジネス価値に変換できるかどうかは人間次第であるということを意味しています。

 

事例: 生成人材スライドとプロフェッショナルの資料の差

生成AIで自動作成されたスライドは、一見見やすく整っています。しかし、それをプロのプレゼンターが見れば一目で“AIっぽさ”を見抜けます。なぜなら、そこには戦略的意図やコンテキストが欠けているからです。

つまり、AIで自動生成された資料は「たたき台」にすぎず、本番で使えるように磨き上げるのはあくまで人間の仕事です。ここにプロフェッショナルの価値があるのです。

 

 

スキルの質と変化スピードのギャップ

―――IT人材不足の本質―――

ここで、「それでもIT人材が不足しているのはなぜか?」という疑問に立ち返りましょう。

その答えは明快です。IT技術者の数が少ないのは事実で、さらに最新技術を扱える人材が圧倒的に少ないのです。

AIやクラウド、モダンな開発環境への対応が求められる一方、現場では10年前のC言語の保守に苦労しているエンジニアも多い。レガシーと最先端の両方を担うバイタリティが求められていますが、そんな万能型人材は極めて稀です。

この背景には、「スキルチェンジ」が追いついていないという課題があります。

 

キーワード解説:スキルチェンジ

スキルチェンジとは、業務に必要なスキルの変化に合わせて、自分のスキルを定期的に見直し、習得・転換していくことを意味します。特に生成AIやDXの時代では、5年前のスキルでは通用しない場面が増えています。

 

 

AIが生むのは“淘汰”ではなく“拡張”

―――関係人口の爆発的拡大―――

ここで、近森が強調しているもう一つの重要な視点があります。

AIは仕事を奪うのではなく、関係人口を爆発的に増やすツールである。

これはどういうことかというと、例えば「文章を書くのが苦手だからブログを書けなかった人」が、音声入力+AIで執筆が可能になったことで、自らを「発信者」として定義できるようになった。つまり、今まで職業として成立しなかった人々が、新たなプレイヤーとして参加できるようになったのです。

同様に、デザイナーでなくても画像生成AIでSNS用画像を作れる時代になりました。デジタル技術によって“できる人”が増える=関係人口が拡張しているのです。

 

 

「超知性リテラシー」と「マインドセットの刷新」

―――求められるのはスキルの再定義―――

この変化に対応するには、単に新しいツールを使えるようになるだけでは不十分です。重要なのは、自らの認知や行動を変える「マインドチェンジ」です。

さらに、その上で求められるのが「超知性リテラシー」です。これはAGI(汎用人工知能)やASI(超知能)に向けた時代に必要な、以下のような素養を指します:

・AIの限界と可能性を知る知識

・データの解釈力と情報倫理

・人間としての創造性・責任の所在

・自律的に学び続ける姿勢(リスキリング)

これからは「AIを使える人」ではなく、「AIをマネージできる人」が評価されるようになります。

 

 

未来を自らの手に取り戻す行動

―――リスキリングとキャリア再設計―――

「仕事がAIに奪われるのでは」と怯えているだけでは何も変わりません。重要なのは、自らのスキルセットを見直し、未来に向けて学び直す(リスキリング)ことです。

研修講座やeラーニングの環境は整ってきています。企業としても、退職金を払うよりも教育投資をした方が合理的です。個人としても、スキルアップは「保険」であり「武器」なのです。

 

キーワード解説:リスキリング

リスキリングとは、今後の業務や成長領域に対応するために、新しいスキルを学び直す取り組みです。生成AIやクラウド技術など、テクノロジーの進化に対応するには、この取り組みが不可欠です。

 

 

まとめ:AIと人間の役割分担から逆算するDX推進戦略

企画書に落とし込むなら、以下のような視点で構成が可能です:

・【課題提起】AIによる業務代替が進む中、IT人材不足が深刻化している。

・【分析視点】業務と仕事の違い、責任と判断を伴う部分は人間に残る。

・【戦略提案】生成AIを業務効率化の道具としつつ、関係人口拡大を図る。

・【施策例】リスキリングによる人材育成、マインドチェンジの促進。

・【成果イメージ】短納期・高品質の仕事創出、新職種の創出と配置最適化。

これらは、DX推進における「人とAIの共創」戦略として、非常に有効な観点です。

 

後編へつづく⋯

いかがでしたでしょうか?
すこしでもみなさまの気づきになれたのであれば幸いです。

IT・DX教育サービスについてお悩みがある方は、ぜひ初回無料のオンラインコンサルティングをご利用ください。必ずお役に立ちます。
www.certpro.jp/dxconsulting/

生成AI導入を検討させている方は、こちらもご覧ください。
セキュリティから活用方法まで、サポートさせていただきます。
certpro-generationaiservice.sfsite.me/

 

【著者紹介】

近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
IoT検定制度委員会事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
一般社団法人 IT職業能力支援機構理事長(Android資格)
電気・電子系技術者育成協議会副理事長(E検定)
NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会メンバー(組込み)
ET教育フォーラム合同会社代表(コンテンツ制作)
経済産業省地方版IoT推進ラボビジネス創出事業メンター(IoT支援)
経済産業省地域DX推進ラボビジネス創出事業メンター(DX支援)
デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
DX事業共同組合設立理事(DX推進)
一般社団法人サステナブルビジネス機構幹事(SDGs認証)
”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会理事(DEI支援)
アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)

DX企画書のネタ帳をはじめた人「DXの鍛え方 伝道師」とは?「DXの道を切り開く伝道師、その人物と使命に迫る」【近森満:自己紹介:2024年版】|#DX企画書のネタ帳

 

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