
【目次】
- 仮想通貨が「悪名」で有名になった日
- 皮肉なテクノロジー普及の歴史:犯罪が生んだ技術の知名度
- 犯罪によるインパクトの事例
- ブロックチェーン技術の光と闇
- サイバー攻撃の進化とグローバルな脅威
- 「個人」もターゲットになる時代へ
- それでも仮想通貨の未来を否定しないために
- まとめ
【記事概要】
仮想通貨ビットコインが広く知られるようになった背景には、皮肉なことにサイバー犯罪が大きく関わっている――。
本稿では、サイバー攻撃と仮想通貨の普及がいかにして相互に影響を及ぼし、ダークウェブやランサムウェアといった犯罪行為の「ツール」としての役割を果たしてきたかを詳しく解説する。
さらに、ブロックチェーン技術の透明性とその裏で広がる匿名性の悪用、東海大学やKADOKAWAなどの具体的なサイバー攻撃事例をもとに、被害の実態とその深刻さを明らかにする。
最終的には、仮想通貨の普及が善意だけでなく“悪用による拡散”であったという現実を直視しながら、今後私たちはどのようなデジタルリテラシーを持つべきか、またサイバー攻撃にどう向き合うべきかについても提言を行います。
【本文】
こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ 近森満です。
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当社では「DX推進人材教育プログラム」として初回無料のコンサルティングを提供しています。DX推進や人材育成のご相談をお待ちしています。
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仮想通貨が「悪名」で有名になった日
「仮想通貨って便利で未来的。でもなんとなく怪しい…」
そんなイメージを持っていませんか?ビットコイン、イーサリアム、そしてNFT。近年では投資対象としても注目され、一般層にも普及しつつある仮想通貨ですが、実はその知名度が一気に高まったきっかけは、犯罪の温床としての利用でした。
特に象徴的なのが「ランサムウェア(身代金ウイルス)」の存在です。サイバー攻撃によって企業や学校のシステムが人質にされ、その“身代金”としてビットコインが要求されるという構図。こうした犯罪がメディアを騒がせるたびに、「仮想通貨」が悪い意味で脚光を浴びるようになっていったのです。
皮肉なテクノロジー普及の歴史:犯罪が生んだ技術の知名度
私たちは日々、インターネットの恩恵を受けながら生活しています。しかし、その裏側にはサイバー犯罪の進化が存在します。
仮想通貨も例外ではありません。元々は非中央集権型の通貨システムとして、国家の影響を受けずに自由に取引できる画期的な仕組みとして誕生したものの、その匿名性がマネーロンダリングや違法取引に利用されるようになりました。
たとえば、違法薬物取引、人身売買、ダークウェブ上の秘密取引において、仮想通貨は「足がつかない」支払い手段として重宝されてきました。そして、それゆえに仮想通貨の存在が人々に知られるようになったという、まさに皮肉な技術普及の歴史があるのです。
犯罪によるインパクトの事例
事例: KADOKAWAのサイバー攻撃
2023年、出版大手のKADOKAWAが大規模なランサムウェア被害に遭いました。データセンターが感染し、書籍販売や動画配信サービスが一時停止。攻撃者は「データを元に戻してほしければ仮想通貨で身代金を払え」と要求しました。
このときKADOKAWAは、「犯罪行為に屈しない」と公表。しかし復旧が進んだ背景には、“交渉”の有無も含めて真相が不明なままでした。ここで使われた仮想通貨は、まさに犯罪者にとっての最適解だったのです。
事例: 東海大学のサイバー被害
2024年4月には、東海大学がランサムウェア攻撃を受け、全国のキャンパスのシステムが停止。授業や学生支援のポータル、メール、Wi-Fiなどが機能しなくなりました。大学生活の根幹が揺るがされる事態に、神奈川県警が捜査を開始。仮想通貨を使った身代金要求があった可能性も示唆されています。
このように、犯罪の被害は企業だけでなく、教育機関や個人にも及んでいるのです。
ブロックチェーン技術の光と闇
仮想通貨の基盤である「ブロックチェーン技術」は、取引の透明性を高める革新的な仕組みとして注目されています。取引履歴は全て公開され、誰でもその履歴を検証できるため、不正ができないとされてきました。
しかし現実には、「どのウォレットが誰のものか分からない」という匿名性により、追跡の困難さが犯罪者に悪用されてしまいます。ビットコインから別の仮想通貨への変換(コンバート)や、海外の取引所経由のマネーロンダリングなど、技術が進化するほどに“抜け道”も増えているのです。
サイバー攻撃の進化とグローバルな脅威
被害は日本国内だけではありません。2022年、世界最大級の仮想通貨取引所バイナンスが804億円、韓国のRoninネットワークでは874億円、さらに北朝鮮関連のハッカーが年間で約2,000億円相当の仮想通貨を盗み出しているという報道もあります。
しかもこれらは組織的なプロフェッショナル犯罪集団によるもの。まるでハイテク版マフィアのような存在が、ネットの裏側で暗躍しているのです。
「個人」もターゲットになる時代へ
犯罪のターゲットは、企業や大学といった大口だけに限りません。最近では個人に対する詐欺的メールや、「あなたのPCから情報を抜きました」と脅す恐喝型メールが急増しています。
さらに、PCをロックして解除キーを売る旧来型の“ウイルス商法”も健在。これらの支払い手段として仮想通貨が使われるようになり、「知らぬ間にウォレット開設→犯人に送金→追跡不能」という構図が形成されているのです。
それでも仮想通貨の未来を否定しないために
では、仮想通貨は“悪”なのでしょうか?
答えは「No」です。
ビットコインをはじめとする仮想通貨は、中央管理のない新しい価値のやり取りの手段であり、将来の金融イノベーションの可能性を秘めています。問題は「使い方」であり、リテラシーの有無が命運を分ける時代に入っているということです。
キーワード解説:ブロックチェーン
ブロックチェーンとは、取引履歴をブロック単位で時系列に記録し、それを分散型のネットワークで共有する技術です。改ざんが困難で透明性が高く、中央機関を必要としない点が特徴です。仮想通貨を支える根幹技術としてだけでなく、サプライチェーン管理や行政手続きなど、社会の多分野で活用が進んでいます。
キーワード解説:ランサムウェア
ランサムウェアとは、システムやデータを暗号化して使用不能にし、元に戻す“鍵”と引き換えに身代金を要求する悪質なウイルスです。支払いに仮想通貨が使われるため、追跡が困難。多くの企業や自治体が被害を受けています。
まとめ
仮想通貨×サイバーセキュリティは教育領域の最重要課題
今回の事例を通じて見えてくるのは、仮想通貨の認知拡大がサイバー犯罪を通じて進んだという皮肉な歴史と、今後もその「裏側」の存在が不可避であるという現実です。
その一方で、この技術を正しく理解し、社会実装に活かすためには、サイバーセキュリティリテラシー、超知性リテラシーやDXリテラシーといった教育が必要不可欠です。とりわけ、企業や教育機関が「防御者」として対策を講じること、そして個人もまた「情報の主体者」として自衛意識を持つことが求められています。
参考:生成AI時代のサイバーセキュリティを学び方
生成AI時代のサイバーセキュリティスキル診断レベル1模擬問題〜あなたのスキルはどのくらい?〜

ぜひ、お試しください。
いかがでしたでしょうか?
すこしでもみなさまの気づきになれたのであれば幸いです。
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【著者紹介】
近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
・IoT検定制度委員会事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
・一般社団法人 IT職業能力支援機構理事長(Android資格)
・電気・電子系技術者育成協議会副理事長(E検定)
・NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会メンバー(組込み)
・ET教育フォーラム合同会社代表(コンテンツ制作)
・経済産業省地方版IoT推進ラボビジネス創出事業メンター(IoT支援)
・経済産業省地域DX推進ラボビジネス創出事業メンター(DX支援)
・デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
・DX事業共同組合設立理事(DX推進)
・一般社団法人サステナブルビジネス機構幹事(SDGs認証)
・”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会理事(DEI支援)
・アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)
DX企画書のネタ帳をはじめた人「DXの鍛え方 伝道師」とは?「DXの道を切り開く伝道師、その人物と使命に迫る」【近森満:自己紹介:2024年版】|#DX企画書のネタ帳