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防災DXの核心は「人・仕組み・テクノロジー」災害に強い社会をつくる次世代のアプローチとは?

2025年4月22日
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【記事概要】

本記事では、「防災DX」とはなにか、「人・仕組み・テクノロジー」の三位一体による新たな災害対策の在り方を探ります。急激に変化する社会環境、複雑化する災害リスク、そしてデジタル技術の進展に対し、単なるテクノロジー導入だけでなく、住民一人ひとりの「マインドセット」の変革がいかに重要であるかを説いています。地域コミュニティでの実例や、防災設備の利活用における課題、また生成AIなど新技術の活用可能性にも言及しながら、VUCA時代における次世代防災の道筋を提示。DX推進の文脈で「社会インフラとしてのテクノロジー整備」が必要不可欠であることを訴え、読者に「自分ごと」として防災に取り組む意識を促す内容となっています。

目次

  • 【本文】
  • 防災にテクノロジーを──「防災DX」という視点
  • 防災は「誰かの仕事」ではない
  • テクノロジーは「魔法の杖」ではない
  • 事例: 地域の防火倉庫と“使えない”設備のギャップ
  • 防災意識を社会全体の「共通言語」にするには
  • テクノロジーの進化と標準化の必要性
  • 事例: 水道インフラの「当たり前」が消える日
  • AIと共存する時代の防災スキルとは
  • まとめ(企画書のネタ):防災DXは「共育・共創・共助」が鍵
  • さいごに
  • 【音声配信】
  • 【著者紹介】

【本文】

防災DXの核心は「人・仕組み・テクノロジー」災害に強い社会をつくる次世代のアプローチとは?
こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ 近森満です。
www.certpro.jp/blogs/dx_chikamori/
当社では「DX推進人材教育プログラム」として初回無料のコンサルティングを提供しています。DX推進や人材育成のご相談をお待ちしています。
www.certpro.jp/dxconsulting/

防災にテクノロジーを──「防災DX」という視点

日本は世界有数の災害大国です。地震、台風、豪雨、津波といった自然災害が頻発するこの国において、いかにして被害を最小限に抑え、人命と財産を守るかは、常に重要な課題です。そして近年、その課題に対する新しい答えとして注目されているのが「防災DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。

単なる「デジタル化」ではなく、防災の仕組みそのものを根本的に見直し、テクノロジー、社会の仕組み、そして私たち一人ひとりの意識を変革する。それが防災DXの本質です。

「防災DXの革新は、
“人”と
“仕組み”と
“テクノロジー”の
バランスがとれて初めて機能する」
では、その意味とは何なのでしょうか。

防災は「誰かの仕事」ではない

私たちは災害を前にして、どうしても「行政が何とかしてくれる」「地域の仕組みがあるはず」と他人任せにしがちです。しかし、近森満が地域の町内会で遭遇したエピソードは、それがいかに危うい認識かを物語っています。

私が住む町内会の総会で、町内会に所属する企業勤務の方が、自社の防災ノウハウを共有しても良いと発言。そのことがあり会議では防災の話になりました。しかし防災について共有していたはずの情報も地域の人々から発言は「防火倉庫にある装備の使い方を知らない」「防火槽が地域用ではなく消防署専用だと知らなかった」といった驚きと気づきに満ちたものでした。
結果としては今後の地域の防災活動にも力を入れていきましょうということになりましたが、課題は残りました。

つまり、仕組みがあっても、それを理解し使いこなす「人」がいなければ意味がない。これは企業内防災でも全く同じで、制度やツールだけ整えても、運用する「人」が育っていなければ成果は出ません。

マインドセット(意識の持ち方)を変えることこそ、防災DXの第一歩なのです。

テクノロジーは「魔法の杖」ではない

昨今、生成AIやドローン、IoTセンサーなど、テクノロジーを活用した防災施策が注目されています。しかし、技術が進化してもそれを扱う「人」のリテラシーが伴わなければ、成果にはつながりません。

たとえば、スマートフォン。緊急速報や防災アプリの通知は、正しく使えば命を守る情報源となります。しかし高齢者などはアプリのインストールや操作が難しく、実際に通知を見逃すことも少なくありません。

さらに、生成AIの活用においても、世代間の「使い方の差」は顕著です。若年層は日常的にAIを活用し、自然に防災情報も取得できるかもしれません。しかし、年配層には“道具としての慣れ”が不足しているため、そもそもAIにアクセスすること自体がハードルとなるのです。

つまり、テクノロジーの導入と並行して、「使いこなせる社会構造と人材育成」がセットでなければ意味がありません。

事例: 地域の防火倉庫と“使えない”設備のギャップ

前出での話ですが、町内の防火倉庫に備えられた水ポンプ。しかし、そもそも近隣の防火槽(大量の水を蓄えるタンク)は消防署が使うものであり、地域住民がアクセスしていいものではなかった──。この事実を知っていた町民はほとんどおらず、災害時には「あるのに使えない」という事態になりかねません。

ハードがあってもソフトがなければ、それは「形だけの防災」。地域住民一人ひとりが、自分たちの装備やインフラを「使える知識」として持つことが求められているのです。

防災意識を社会全体の「共通言語」にするには

現代は、情報があふれるVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代です。コロナ禍や自然災害の頻発により、「次は自分の身に起きるかもしれない」という危機感を、私たちは共有するようになりました。

こうした背景から、防災は「専門家任せ」ではなく、「社会全体で共有すべき基礎的リテラシー」として再定義されつつあります。防災マニュアルや避難経路の知識にとどまらず、自ら情報を判断し、行動に移す力が求められているのです。

このような力は、防災に限らず、AIやIoT、生成AIなどの技術進展に対応するうえでも求められる基盤的能力と重なります。「変化に適応し、正しい判断を自ら下す」ことが、今後のあらゆる局面で求められる次世代リテラシーなのです。

この汎用的なスキルは、企業内の人材育成にも応用可能であり、DX人材の育成と親和性が高いテーマでもあります。

テクノロジーの進化と標準化の必要性

防災DXを推進するうえで、もう一つ大きな課題が「テクノロジーの標準化」です。たとえば、電気自動車の充電規格「テスラ方式」と「CHAdeMO方式」の違いのように、インフラレベルでの“規格のバラつき”は利用者の混乱を招きます。

防災テクノロジーでも同様に、地域や国ごとに規格がバラバラでは、災害時に互換性が取れず、効果を発揮しません。社会全体でのプラットフォーム整備と、共通の技術基盤の構築が必要です。

ここにおいても、行政・自治体・企業・市民が一体となって標準化を進める協働体制が求められています。

事例: 水道インフラの「当たり前」が消える日

日本では、水道水を蛇口からそのまま飲めるという“常識”があります。これは世界的に見ても希少なインフラ整備の成果です。しかし、災害時にはこの“常識”が一瞬で崩れる可能性があります。

非常時に備えて、正しい飲み水の確保方法を知っている人はどれほどいるでしょうか。給水所の位置、自宅での備蓄方法、ろ過や煮沸の仕方──。教育されていなければ、誰もがサバイバル状態になります。

「あって当たり前」に依存するのではなく、「なくても生き抜ける力」を育むことが防災DXの本質です。

AIと共存する時代の防災スキルとは

生成AIをはじめとした高度なテクノロジーが日々進化する現代において、防災の現場でもAIの導入が進みつつあります。たとえば、AIによる気象データの解析や、避難誘導シミュレーションの最適化といった活用がその一例です。

しかし、どれほどAIが進化しても、最終的に状況を判断し、行動に移すのは人間自身です。災害時にはマニュアル通りにいかないことも多く、瞬時の判断が命を左右します。

だからこそ今、AIに任せきりにするのではなく、**AIを使いこなす「協働力」と「判断力」**を持った人材=“実践的なデジタル人材”が求められているのです。

この視点に立てば、防災教育も単なる訓練ではなく、「テクノロジーを活用した危機対応力」を養うものへとアップデートしていく必要があります。

まとめ(企画書のネタ):防災DXは「共育・共創・共助」が鍵

・人:地域の防災意識とスキル向上(リスキリング)
・仕組み:共有され機能する制度・インフラ
・テクノロジー:誰もが使える標準化とユニバーサル設計

この三位一体で進める防災DXは、未来の社会を守る“共助社会”の基盤となります。これは企業の危機管理体制にも直結し、組織内DXと親和性の高い企画書ネタともなるはずです。

さいごに

防災というテーマは、あまりにも日常的で、つい軽視されがちです。しかし、テクノロジーが進化した今こそ、防災の概念を刷新する絶好のタイミングでもあります。

あなたの会社、あなたの家族、あなた自身の未来を守るために、今すぐできる小さな「防災DX」を始めてみませんか?

いかがでしたでしょうか?
すこしでもみなさまの気づきになれたのであれば幸いです。

DX推進担当者の育成やIT教育研修でお悩みがあれば、ぜひ初回無料のコンサルティング「DX推進人材教育プログラム」にご応募ください。かならずお役に立ちます。
ではまた。
www.certpro.jp/dxconsulting/

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【音声配信】

※音声収録のポッドキャストではテキストには載っていない㊙話も。
ぜひ、ものは試しに聴いてみてください。
最近ビデオポッドキャストを始めましたので映像でもどうぞ!

【著者紹介】

近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
IoT検定制度委員会事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
一般社団法人 IT職業能力支援機構理事長(Android資格)
電気・電子系技術者育成協議会副理事長(E検定)
NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会メンバー(組込み)
ET教育フォーラム合同会社代表(コンテンツ制作)
経済産業省地方版IoT推進ラボビジネス創出事業メンター(IoT支援)
経済産業省地域DX推進ラボビジネス創出事業メンター(DX支援)
デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
DX事業共同組合設立理事(DX推進)
一般社団法人サステナブルビジネス機構幹事(SDGs認証)
”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会理事(DEI支援)
アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)

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