
【記事概要】
本記事では、「アンラーニング」というキーワードを軸に、DX推進や生成AI時代を生き抜くために欠かせない「学び直し以前の学びほぐし」について掘り下げていきます。アンラーニングとは、単に過去の知識を忘れることではなく、これまで正しいと信じてきた成功体験や価値観を「使うのをやめる」技術です。変化の激しい時代において、新しい学びを受け入れるための余白をつくる行為だと言えます。
近森満は、認知バイアスや古い常識が、知らず知らずのうちに成長の足かせになっている現実を指摘します。特に50代・60代を中心とした世代にとって、技術進化や働き方の変化スピードは想像以上に速く、過去の成功体験に縛られ続けること自体がリスクになり得ます。だからこそ、アンラーニングとリスキリングは対立する概念ではなく、セットで実践すべきプロセスであると強調しています。
記事では、営業スタイルやマネジメント、AIによって陳腐化した技術知識など、具体例を交えながらアンラーニングの実践イメージを提示します。さらに、現状把握・取捨選択・学び直し・振り返りという4つのステップを通じて、誰でも取り組めるアンラーニングの進め方を整理しています。最終的には、マインド・トランスフォーメーションを起点に、DX時代を主体的に生きるための行動変容を促す内容となっています。

【本文】
こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ 近森満です。
www.certpro.jp/blogs/dx_chikamori/
今日は「アンラーニング」という、ちょっと聞き慣れないけれど、これからのDX推進やデジタル人材育成においてめちゃくちゃ重要なキーワードについて、じっくり整理していきます。
DX、生成AI、AGI、ASI……。
毎年どころか、毎月のように新しい言葉が生まれ、技術はアップデートされ続けています。
その一方で、「学ばなきゃいけないのは分かっているけど、正直ついていけない」と感じている人も多いはずです。
その原因、実は「学んでいないから」ではありません。
学びすぎて、頭の中がパンパンだからなんです。
アンラーニングとは何か
アンラーニングとは何か。
一言で言うなら、古い知識を手放して、変化に強い自分をつくる技術です。
ここで大事なのは、「忘れる」ではないという点です。
人間は、成功体験や失敗体験をそう簡単に忘れられません。
私自身、40年以上IT業界にいますが、若い頃にうまくいったやり方、痛い目を見た経験ほど、鮮明に覚えています。
だからアンラーニングとは、記憶を消す行為ではなく、
その知識や価値観を“使うのをやめる”選択なのです。
よく「知の断捨離」と言われますが、まさにその通り。
引き出しの中にギュウギュウに詰め込まれた過去の常識を、一度そっと脇に置く。
そうしないと、新しい学びが入る余白が生まれません。
認知バイアスが成長を止める
アンラーニングを語る上で外せないのが、認知バイアスです。
「昔はこうだった」
「前はこれで成功した」
「普通はこうするものだ」
こうした思い込みは、本人にとっては“正解”に見えます。
しかし実際には、それが成長のブレーキになっているケースが本当に多い。
たとえば、昔は当たり前だった管理主義のマネジメント。
今の時代、それを続けると「モラハラ」「パワハラ」と言われかねません。
価値観そのものが悪いわけではない。
今の時代には合わなくなっただけなんです。
ここを勘違いすると、「自分の過去を否定された」と感じてしまう。
でも、アンラーニングは自己否定ではありません。
時代に合わせて、使う引き出しを変える行為です。
なぜ今、アンラーニングが必要なのか
技術の進化スピードを少し振り返ってみましょう。
パソコンが普及して、まだ50年。
スマートフォンは20年程度。
クラウドは10年ちょっと。
生成AIは、たった数年です。
50代・60代の人間が生きてきた時間の中で、
社会も、働き方も、技術も、とんでもないスピードで変わってきました。
馬で移動していた時代から、車に変わった。
それだけで、仕事のやり方は激変しましたよね。
今はそれと同じことが、
AI・デジタル・DXによって起きています。
過去の成功体験にしがみつくほど、
新しいチャレンジが億劫になる。
学びが入ってこなくなる。
だからこそ、
手放すことが、学びのスタートになる。
この感覚を、ぜひ心に刻んでほしいと思います。
アンラーニングとリスキリングの違い
ここでよくある誤解を整理します。
リスキリングとは、新しいスキルを身につけること。
スキルチェンジ、キャリアパスの再設計の文脈でよく使われます。
一方、アンラーニングは、
古い知識や価値観を削除するプロセスです。
追加するのがリスキリング。
削除するのがアンラーニング。
この2つは対立関係ではありません。
必ずセットで行うものです。
入れ物がいっぱいのままでは、新しいスキルは入りません。
だからまず、棚卸しをする。
これが「学びほぐし」です。
実務におけるアンラーニングの具体例
たとえば営業。
訪問営業が悪いわけではありません。
私自身、訪問営業は大好きです。
でも、「訪問しなければ成果は出ない」という価値観に縛られていたらどうでしょう。
オンラインで成果を出す手法を学ぶ余地がなくなります。
これはまさにアンラーニング。
訪問営業“だけ”に頼る価値観を手放すという選択です。
マネジメントでも同じです。
管理主義から、多様性・自立型マネジメントへ移行する。
これも立派なアンラーニングです。
技術分野では、AIによって陳腐化した知識を見直すこと。
昔必須だったスキルが、今はAIで代替できる。
だったら、人間がやるべき価値はどこか。
そこに思考をシフトする必要があります。
アンラーニングの4ステップ
では、どう進めればいいのか。
シンプルに、次の4ステップです。
まず現状把握。
自分が持っている古い知識、価値観、成功体験をリスト化する。
次に取捨選択。
使い続けるもの、使うのをやめるものを決める。
三つ目が学び直し。
新しい知識やスキルを取り入れる。
これはリスキリングに近いですね。
最後が振り返り。
過去の自分と比較し、どうアップデートされたかを確認する。
学んで終わり、では意味がありません。
自分がどう変わったかを言語化することが大切です。
マインド・トランスフォーメーションへ
アンラーニングは、単なるスキルの話ではありません。
これはマインド・トランスフォーメーションの一部です。
自分がコントロールできないことを、
いつまでも考え続けるのは時間の無駄です。
過去は変えられない。
未来はまだない。
あるのは「今、どうするか」だけ。
だからこそ、
余白をつくり、
仮説思考で考え、
小さく学び、小さく試す。
マイクロラーニング、マイクロクレデンシャルの時代です。
一年かけて学ぶ必要はありません。
目の前の一歩を、止めないこと。
まとめ:アンラーニングはDX時代の基礎体力
アンラーニングとは、過去を否定することではありません。
未来に進むために、使う引き出しを変えることです。
DX推進、生成AI、超知性リテラシー。
どれも、学ぶ前に「手放す」勇気がなければ始まりません。
さいごに
そもそもですね、なんで私がここまでアンラーニングの話をしているのかというと、
あまりにも多くの人が、過去のことに縛られすぎていると感じるからなんです。
過去は変えられません。
未来は、まだありません。
この視点で考えると、本当に大切なのは
「今、どうするか」
「これから、どうするか」
この二つだけなんですよね。
ところが現実には、
「あの人はこうだったから」
「昔、こんなふうに言われていたから」
そんな情報を無意識にため込んでしまい、自分の中に勝手なイメージを植えつけてしまう。
これはまさに認知バイアスです。
この認知バイアスが厄介なのは、
自分では正しく判断しているつもりになってしまうところです。
でも実際には、それが新しい発想や行動の芽を摘んでしまっているケースが本当に多い。
だからこそ必要なのが、
引き出しの中に余白をつくることなんです。
余白がなければ、新しいことは入りません。
知識も、発想も、考える時間も入ってこない。
少しでいいから、隙間や余力を残しておく。
これが、アンラーニングの本質です。
もっと言えば、これは
マインド・トランスフォーメーションの一部でもあります。
自分がコントロールできないことを、
いつまでも考え続けても仕方がありません。
そのコントロールできないことに、大切な時間を使い続けるのは、
正直言って、全くもって無駄です。
だったら、
無理を減らす。
無駄を減らす。
そして、
生産性が高く、
ライフワークバランスの取れた、
クオリティ・オブ・ライフを目指してほしい。
アンラーニングとは、過去を否定することではありません。
未来の自分のために、今の思考を軽くする技術です。
10年先、超知性ASIやAGIが当たり前になる時代に向けて、
私たち自身がアップデートを止めないこと。
これが、今いちばん大切なことだと思っています。
ぜひ、今日この瞬間から、
あなた自身の引き出しの中を、少しだけ空けてみてください。
本日の内容が、あなたの「シンギュラリティ時代への準備」に向けた、
ほんのわずかでも「気づき」や「次の一歩」になれたなら幸いです。
キーワードの解説
アンラーニング
アンラーニングとは、過去に身につけた知識や成功体験、価値観を「忘れる」のではなく、「使うのをやめる」ための思考技術です。DX推進や生成AIの普及により、従来の常識が急速に陳腐化する中で、新しい学びを取り入れるためには、まず頭の中に余白をつくる必要があります。アンラーニングは知の断捨離とも言われますが、自己否定ではなく、時代に合わせて引き出しを切り替える前向きな行為です。認知バイアスを自覚し、過去の成功体験に縛られない姿勢こそが、変化に強い人材を育てる基盤になります。
リスキリング
リスキリングとは、新しい業務や役割に対応するために、新たなスキルセットを学び直すことを指します。デジタル・トランスフォーメーションが進む中で、AIやデータ活用、クラウドなどの技術領域だけでなく、思考力や仮説構築力といったソフトスキルも重要視されています。アンラーニングが「削除」のプロセスであるのに対し、リスキリングは「追加」のプロセスです。この二つをセットで実践することで、学びが定着し、実務に活かせる形でキャリアパスの再設計が可能になります。
マインド・トランスフォーメーション
マインド・トランスフォーメーションとは、行動やスキルの前提となる思考や価値観そのものを変えていく取り組みです。自分ではコントロールできない他人の評価や過去の出来事に囚われ続けるのではなく、「今どうするか」「これからどうするか」という視点に切り替えることが求められます。アンラーニングは、このマインド・トランスフォーメーションを実現するための実践的なアプローチであり、DX時代における人材育成の根幹をなす考え方です。
【著者紹介】
近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ 代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
・IoT検定制度委員会 事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
・一般社団法人 IT職業能力支援機構 理事長(Android資格)
・電気・電子系技術者育成協議会 副理事長(E検定)
・NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会 メンバー(組込み)
・ET教育フォーラム合同会社 代表(コンテンツ制作)
・経済産業省地方版IoT推進ラボ ビジネス創出事業メンター(IoT支援)
・経済産業省地域DX推進ラボ ビジネス創出事業メンター(DX支援)
・デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
・DX事業共同組合 設立理事(DX推進)
・一般社団法人日本サステナブルビジネス機構 幹事(SDGs認証)
・”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会 理事(DEI支援)
・アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)
・一般社団法人国際サイバーセキュリティ協会 事務局長(IACS認定)
