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事務職はAIに奪われる?「攻めのバックオフィス」と生成AIで成長する人の共通点

2025年10月1日
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【記事概要】

本記事は、生成AIの普及と事務職の有効求人倍率低下というニュースを起点に、AI時代に「成長できる人」と「そうでない人」の決定的な違いを解説します。 前半では、データに基づき旧来型の「事務職」という枠組みの限界を指摘。単なる作業者から脱却し、経営に提言できる「攻めのバックオフィス」へと進化するための意識変革(マインド・トランスフォーメーション)を提唱します。 後半では、AI活用の本質を「手抜き」ではなく「コア業務への投資」と再定義。AI画像の品質問題で炎上したJALカードの事例を反面教師に、AI時代こそ「最終責任」と「審美眼」を持つ人間力が不可欠であると説きます。単なるツール論ではなく、全ビジネスパーソンのキャリア戦略に直結する内容です。

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【本文】

こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ 近森満です。 www.certpro.jp/blogs/dx_chikamori/ 当社では「DX推進人材教育プログラム」として初回無料のコンサルティングを提供しています。DX推進や人材育成のご相談をお待ちしています。 www.certpro.jp/dxconsulting/

事務職は本当にオワコンなのか?AI時代に突きつけられる厳しい現実

「AIに仕事を奪われる」 そんな言葉が飛び交うようになって久しいですが、最近Newsweekなどのメディアで「AIで事務職が減少、日本企業に人材採用抑制の波」という衝撃的な記事が話題になりました。みなさんも目にしましたか?

記事によると、2024年4月から7月にかけて求人広告の掲載件数が4ヶ月連続で減少。特に事務職の減少幅が大きく、AIによる自動化の進展が主な原因と見られています。

「事務職」の有効求人倍率、実はAIブームの前からめちゃくちゃ低いのをご存知でしょうか。なんと0.44倍程度。10人の応募に対して4人しか採用されない狭き門です。一方で、エンジニアや現場職、営業職は引く手あまたで、倍率が数倍〜10倍になることも珍しくありません。

それなのに、なぜ多くの人がいまだに「事務職」にしがみつこうとするのでしょうか?

私の推論ですが、2,000年前後の大学進学率上昇期に社会に出た世代、特に「オフィスワーク=安定した事務職」というイメージを強く持ったまま、キャリアを重ねてきた背景があるように感じます。ドラマ『ショムニ』に憧れた世代と言えば伝わるでしょうか。制服を着て、オフィスでバリバリ働く…そんなイメージです。

しかし、現実は甘くありません。企業は今、単なる「作業者」としての事務職を求めていないのです。

「攻めのバックオフィス」へ進化せよ!

マインド・トランスフォーメーションのすすめ

求人倍率が低いからといって、事務職という仕事自体が不要なわけではありません。問題なのは「言われたことだけをやる」「私は事務だからこれしかやりません」という受け身の姿勢です。

ここで、私が経営するサートプロに以前いた、ある女性社員のエピソードを紹介させてください。

事例:社長を「詰める」最強の事務職、Mさんの話

彼女(Mさん)は、職種としては「事務職」で入社しました。しかし、彼女の仕事ぶりは、世間一般がイメージする事務とは全く異質でした。

彼女はことあるごとに、社長である私を「詰めて」くるんですw
「近森さん、もっと仕事してください!」
「これやってくれないと、お客さんに迷惑がかかります!」
「この資料、いつまでに確認できますか?遅いです!」

まさに「攻めの事務職」です。彼女は単に書類を整理したり電話番をするだけでなく、会社の業務全体を見渡し、社長の尻を叩き、顧客満足度を担保するために必要なアクションを自ら起こしていました。

彼女のような存在こそが、これからの時代に求められる「バックオフィス」の完成形ではないでしょうか。

DXの前に必要なのは「MX(マインド・トランスフォーメーション)」だ

よくDX(デジタルトランスフォーメーション)と言われますが、デジタルツールを導入する前に、まず人の意識を変えなければなりません。私はこれを「マインド三姉妹」と呼んでいます。

  1. マインドシフト(Mind Shift)
    変化への気付き。

  2. マインドチェンジ(Mind Change)
    意識を意図的に変えること。

  3. マインド・トランスフォーメーション(MX)
    組織全体、社会全体の意識が変容すること。

Mさんのように、自分の職域を勝手に「ここまで」と定義せず、組織の成果のために越権行為も辞さない姿勢。これこそがMXの実践例です。企業側も「事務職=作業員」という古いフィルターを外し、彼らのポテンシャルを解放する仕組みを作る必要があります。

生成AIを使って「成長できる人」と「そうでない人」の決定的な違い

さて、ここからが本題です。生成AIが普及した今、私たちの働き方はどう変わるべきか。 アシスタントの堀内さんとの対話の中で、非常に興味深い定義が生まれました。

「AIを使って成長できる人」とは、AIをコア業務ではなく、周辺業務の短縮に使う人。 「AIを使っても成長できない人」とは、AIを単なる手抜きの道具として使う人。

どういうことか、深掘りしてみましょう。

例えば、私のコア業務は「経営判断」や「新規事業の構想」「講演活動によつ売名行為w」などです。
一方で、そのために必要な「情報収集」「資料のラフ作成」「メールの下書き」といった周辺業務には膨大な時間がかかります。 これら周辺業務をAIに任せ(手抜きし)、浮いた時間をコア業務(人間にしかできない付加価値の高い仕事)に再投資する。これが「成長できる人」のAI活用法です。

逆に、コア業務そのものをAIに丸投げして、「はい、できました!」と質の低いアウトプットを出してしまう。これは単なる「職務放棄」であり、成長どころか信頼を失う行為です。

私自身の中にも、「成長できる近森満」と「成長できない近森満」がいます。 ついつい、自分でやらなくてもいい作業(TikTokをダラダラ見るような時間の浪費に近い作業)に没頭してしまいそうになりますが、そんな自分はリストラしなければなりません(笑)。AIという優秀な部下がいるのだから、経営者である自分はもっと高次な判断に集中すべきなのです。

炎上事例から学ぶ「AI任せ」の落とし穴

「AIを手抜きの道具」として使ってしまい、手痛い失敗をした事例がつい最近ありました。 ある大手クレジットカード会社のWebサイトリニューアルにおける炎上騒動です。

高級感のあるメタルカードの紹介ページに、生成AIで作られたと思われる画像が使用されていたのですが、そのクオリティがあまりにもお粗末でした。

  • 映画館でポップコーンを食べているシーンなのに、ポップコーンにストローが刺さっている。

  • 高級レストランの食事シーンで、フォークの刃の本数が6本もある。

  • 指の描写が不自然。

これがもし、個人のブログなら笑い話で済んだかもしれません。しかし、年会費数万円もするステータスカードの公式サイトです。ブランドの信頼に関わる問題です。

DX(Digital Transformation)とは、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することです。 単にアナログをデジタルに置き換える「デジタイゼーション」や、プロセスをデジタル化する「デジタライゼーション」とは一線を画します。

クレジットカードの事例は、ツール(生成AI)は使っていても、顧客体験やブランド価値を高めるというDXの本質的な目的を見失い、プロセスの手抜きに走ってしまった「DXの失敗例」と言えるでしょう。

なぜこんなことが起きたのか?

制作会社がAIで作った画像をそのまま納品したのか、発注側の担当者がチェックを怠ったのか。いずれにせよ、ここには「人間の責任」が欠落しています。 AIは平気で嘘をつきます(ハルシネーション)。
だからこそ、最後の砦として人間が「品質チェック(Quality Control)」を行い、「審美眼」を働かせる必要があります。

この炎上事例は、私たちに新しい仕事の定義を教えてくれています。 それは「AIのアウトプットを評価・保証する」という新たな職能です。

これまで撮影にかかっていたコストや時間をAIで短縮するのは構いません。しかし、浮いたリソースを「品質確認」や「クリエイティブのブラッシュアップ」に充てなければ、それはただの「手抜き」であり、プロの仕事ではありません。

まとめ(企画書のネタ):AIはただの道具、使い手の「人間力」が試されている

今回の話を企画書のネタとしてまとめるなら、以下のようになります。

  1. 事務職の再定義
    「作業者」としての事務職はAIに代替される。目指すべきは、組織の課題を発見し、経営層や他部署に働きかける「攻めのバックオフィス」。

  2. AI活用の鉄則
    AIは「サボるため」ではなく「より高い成果を出すため」に使う。周辺業務をAIで効率化し、浮いた時間をコア業務(創造的業務、対人コミュニケーション、意思決定)に投資せよ。

  3. 新たなリスク管理
    AI生成物は必ず人間が責任を持って監修する。AIリテラシーだけでなく、倫理観や審美眼を持った「目利き」ができる人材(超知性リテラシーを持つ人材)の育成が急務。

AIは社会のインフラです!

 電車に乗って通勤するのが当たり前のように、AIを使って仕事をするのが当たり前の時代です。 電車に乗っているだけで偉いわけではありませんよね? 重要なのは、その電車を使って「どこに行き、何をするか」です。

さいごに

いかがでしたでしょうか? 「事務職だから」「文系だから」と自分を枠にはめてしまうのは、あまりにももったいないことです。AIという最強の武器を手に入れた今、私たちは誰でも、どんな職種でも、クリエイティブで価値ある仕事ができる可能性を秘めています。

すこしでもみなさまの気づきになれたのであれば幸いです。 DX推進担当者の育成やIT教育研修でお悩みがあれば、ぜひ初回無料のコンサルティング「DX推進人材教育プログラム」にご応募ください。かならずお役に立ちます。
ではまた。


【キーワード解説:リスキリング】
リスキリング(Reskilling)とは、技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、業務上で必要となる新しい知識やスキルを習得することを指します。単なる「学び直し」と混同されがちですが、本質的には「新しい職業に就くため」、あるいは「今の職業で大幅に変化した業務に対応するため」のスキル獲得を意味します。 経済産業省も推奨しており、企業が生き残るためには、従業員が既存のスキルセットに固執するのではなく、DX推進やAI活用といった成長分野へスキルをシフトさせることが不可欠です。退職金を払って人員整理をするよりも、リスキリングを通じて人材の価値を高める方が、企業にとっても個人にとっても建設的な未来につながります。

【キーワード解説:マインドセット / マインドチェンジ】
マインドセットとは、経験や教育、先入観などから形成される思考様式や心理状態のことです。組織変革においては、この固定化されたマインドセットが阻害要因になることが多々あります。 マインドチェンジは、環境の変化に合わせて自らの意識や価値観をアップデートすること。そしてマインド・トランスフォーメーション(MX)は、個人の意識変革が組織全体の文化や風土を変え、最終的にビジネスのあり方そのものを変容させる段階を指します。DXを成功させるには、ツールの導入(デジタル)よりも先に、このMXによる土壌づくりが不可欠です。

【キーワード解説:生成AI・AGI】
生成AI(Generative AI)は、学習データを基に新しいコンテンツ(テキスト、画像、コードなど)を生成するAIです。現在は特定のタスクに特化したAIが主流ですが、将来的には人間のように汎用的な知能を持つAGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)、さらには人類の知能を超えるASI(Artificial Super Intelligence:人工超知能)へと進化すると予測されています。 この進化の過程において、人間は「AIに指示を出す力(プロンプトエンジニアリング)」や「AIの出力を評価・判断する力(超知性リテラシー)」が求められます。AIは脅威ではなく、人間の能力を拡張する強力なパートナーとして捉えるべきです。


【著者紹介】

近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ 代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
IoT検定制度委員会 事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
一般社団法人 IT職業能力支援機構 理事長(Android資格)
電気・電子系技術者育成協議会 副理事長(E検定)
NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会 メンバー(組込み)
ET教育フォーラム合同会社 代表(コンテンツ制作)
経済産業省地方版IoT推進ラボ ビジネス創出事業メンター(IoT支援)
経済産業省地域DX推進ラボ ビジネス創出事業メンター(DX支援)
デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
DX事業共同組合 設立理事(DX推進)
一般社団法人日本サステナブルビジネス機構 幹事(SDGs認証)
”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会 理事(DEI支援)
アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)
一般社団法人国際サイバーセキュリティ協会 事務局長(IACS認定)

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