
【記事概要】
OpenAIのGPT-5が2025年に登場して以降、「冷たい」「寄り添わない」といったユーザーの感情的な不満が広がっています。本記事では、期待から一転“嫌われ者”とされたGPT-5に対するユーザーの反応を起点に、その背景や本質、そして私たちが向かうべき方向性を探ります。前編では、GPT-4oとの比較や「性格が変わった」ような感覚の正体をひも解きつつ、カスタマイズやパーソナライズの重要性を紹介。後編では、生成AIの立ち位置が「道具」から「執事」や「副操縦士」へと進化している現状を論じ、今後のAI活用には“心の強さ”や“しつこさ”が不可欠であるという提言を展開。単なる機能批判ではなく、AIとの共存を見据えたマインド・トランスフォーメーション(MX)の必要性を訴えます。

【本文】
こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ 近森満です。
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GPT-5登場の衝撃と期待の裏切り
2025年夏、満を持して登場したGPT-5は、多くの人々が待ち望んでいた存在でした。
GPT-4oから大きな飛躍を遂げるのではないか、もしかするとAGI(汎用人工知能)へ近づくのではないかと、多くの専門家やユーザーが期待を寄せていたのです。
しかし、リリース直後の反応は意外なものでした。
「冷たい」「寄り添ってくれない」「突き放されたように感じる」といった声がSNSやフォーラムで噴出し、あれほどの熱狂が一転して不満へと変わったのです。
この現象は単なる「機能の好き嫌い」ではなく、ユーザーがAIに対して抱き始めた人間的な感情投影の現れでもありました。
期待と現実のギャップ
ユーザーが抱いた不満の核心には、「GPT-4oまでは親しみやすかったのに、GPT-5は距離を置くようになった」という感覚がありました。
これはまるで、身近なアイドルが映画俳優になってしまい「高嶺の花」になったかのような心理に近いものです。
実際、GPT-5はマルチモーダル対応や推論力の向上など、性能面では群を抜いています。ベンチマークテストでも他の生成AIを上回る評価を得ています。
にもかかわらず「嫌われ者」扱いされるのはなぜでしょうか。
答えの一つは、AIが余計な提案をするようになったことです。
本来なら質問に答えるだけでよかったものが、「次はこの表を作れます」「図解も可能です」と自動で踏み込んでくる。その親切さが、時に「おせっかい」「押し付けがましい」と受け取られたのです。
事例: AIはなぜ“性格が変わった”ように見えるのか
以前のGPTは「はい、承知しました。次は何をしますか?」というスタンスでした。
しかしGPT-5は「次はこれをやるべきです」と先回りする存在になっています。
これは人間社会でもよくあることです。
善意から行動しても「余計なお世話」と受け取られるケースがあるように、AIもまた進化の過程で「親切すぎる存在」になってしまったのです。
AIとの付き合い方を変える必要性
重要なのは、GPT-5が「冷たい存在」になったのではなく、使い手側が期待値を上げすぎていたという点です。
性能向上によって、ユーザーはAIに“人間らしさ”を求め始めました。
しかしAIは人間ではありません。
人格を持つのではなく、アルゴリズムとデータに基づいて応答する仕組みです。
そのため、「性格が変わった」「冷たくなった」と感じるのは、実際にはユーザーの投影した感情の変化にすぎません。
カスタマイズとパーソナライズの力
ここで注目すべきは、ChatGPTが備えるカスタマイズ機能です。
ユーザーは自分のアカウント設定から、AIに「自分をどう呼ぶか」「どんな性格で振る舞うか」を指定できます。
例えば、名前を「王様」と設定すれば「王様、本日はどのようなご用件でしょうか」と呼びかけられる。
性格を「思いやりのある聞き役」に設定すれば、冷たい応答ではなく、より共感的な会話が返ってきます。
つまり「冷たい」と感じるのは初期設定の問題であり、AIを“育てる”のはユーザー自身なのです。
事例: パーソナライズによるAIの再生
あるユーザーは、GPT-5を「自分専用のビジネス秘書」としてカスタマイズしました。
毎朝「おはようございます。本日の会議資料はこちらです」と始まり、必要に応じて関連ニュースや顧客情報まで提示してくれるようになったのです。
冷たいどころか、頼れる執事のような存在になったというのがその人の実感でした。
GPT-5はどこへ向かうのか
後編ではさらに踏み込み、GPT-5の進化が意味する方向性を考えます。
それは単なる「質問応答システム」から脱却し、執事(バトラー)や副操縦士(Copilot)として人間を支える存在へと変わろうとしている点です。
Microsoftが「Copilot」という名前を定着させたように、AIは単なるツールではなく「パートナー」としての役割を帯び始めています。
この転換点において、重要なのはユーザー自身のマインド・トランスフォーメーション(MX)です。
マインド・トランスフォーメーション(MX)の必要性
DX(デジタル・トランスフォーメーション)は技術の導入を中心に進めてきました。
しかし、AI時代に必要なのはMX、すなわちマインドセットの変革です。
人間はAIに振り回されるのではなく、自ら主導して「どう使いたいか」を明確にする必要があります。
そのためには以下の要素が不可欠です。
-
しつこさ:
AIに自分の意図を理解させるまで繰り返し伝える -
心の強さ:
AIが冷たく感じても折れずに使い続ける -
冷徹さ:
AIに感情移入しすぎず、道具として割り切る視点
これらは従来のリスキリングと同様に、次世代の超知性リテラシーを形成する要素でもあります。
事例: 執事型AIの未来像
近い将来、AIはまるで「黒服の執事」のように振る舞うでしょう。
ユーザーが何も言わなくても、翌朝には資料が完成している。
大切なメールを自動で仕分け、不要なものは処理してくれる。
それは夢物語ではなく、すでにGPT-5と周辺のAIエージェント技術が指し示している未来です。
まとめ:GPT-5批判は成長の証
「冷たい」と批判されることは、むしろGPT-5が人間らしく近づいた証拠でもあります。
ツンデレのように扱われるAIは、すでに“ただの機械”を超え、社会的存在感を持ち始めているのです。
だからこそ、私たちはAIに依存するのではなく、主体的にカスタマイズし、育て、使い倒す姿勢が求められます。
さいごに
本日の内容が、あなたの「シンギュラリティ時代への準備」に向けた、わずかながらでも「気づき」や「次の一歩」のヒントになれたなら幸いです。
10年先の超知性ASIやAGIが当たり前になる未来に向けて、私たち自身をアップデートし続けることが、今最も重要です。
ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
「社員のDXマインドをどう高めるか?」、「実践的なITスキル教育が進まない」など、DX推進担当者の育成やIT教育研修でお悩みでしたら、ぜひ一度お聞かせください。
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次回の記事も、どうぞお楽しみに!
キーワードの解説
DX推進
DX推進とは、デジタル技術を活用して業務や組織の在り方を根本から変革し、新しい価値を生み出す取り組みを指します。単なるIT化や効率化にとどまらず、ビジネスモデルや企業文化そのものを進化させる点が特徴です。特に生成AIやIoTの普及により、企業は従来の枠組みを超えて市場競争力を高めることが求められています。DX推進は「デジタル人材の育成」「スキルチェンジ」「マインドセット変革」など複合的な要素を伴うため、単一のプロジェクトではなく継続的な組織改革として取り組むことが不可欠です。
マインド・トランスフォーメーション(MX)
MX(Mind Transformation)は、AI時代のDXを実現するために必要な人間側の意識変革を意味します。技術導入だけでは変革は成功しません。社員一人ひとりが新しいツールやプロセスを積極的に活用し、自ら学び続けるマインドチェンジが不可欠です。MXは「マインドシフト」「マインドチェンジ」「マインドトランスフォーメーション」という3段階のプロセスで捉えられ、最終的には組織文化全体を変える力になります。特に生成AIが日常業務に浸透する中で、抵抗感を乗り越える精神的柔軟性が成功の鍵となります。
生成AI
生成AI(Generative AI)は、与えられたデータや指示に基づいて文章、画像、音声、プログラムコードなどを自動生成する人工知能の一種です。GPTシリーズやDALL·E、Midjourneyなどが代表的な例であり、従来の検索や分析を超え、クリエイティブな価値を創出できる点が注目されています。ビジネスの現場では、企画書の作成、カスタマーサポート、製造業のシミュレーション、教育研修の効率化など、幅広い分野で活用が進んでいます。ただし、誤情報(ハルシネーション)や倫理的リスクも伴うため、活用には人間による検証と責任ある運用が不可欠です。
【著者紹介】
近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ 代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
・IoT検定制度委員会 事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
・一般社団法人 IT職業能力支援機構 理事長(Android資格)
・電気・電子系技術者育成協議会 副理事長(E検定)
・NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会 メンバー(組込み)
・ET教育フォーラム合同会社 代表(コンテンツ制作)
・経済産業省地方版IoT推進ラボ ビジネス創出事業メンター(IoT支援)
・経済産業省地域DX推進ラボ ビジネス創出事業メンター(DX支援)
・デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
・DX事業共同組合 設立理事(DX推進)
・一般社団法人日本サステナブルビジネス機構 幹事(SDGs認証)
・”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会 理事(DEI支援)
・アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)
・一般社団法人国際サイバーセキュリティ協会 事務局長(IACS認定)
