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生成AIを許せなくなる日ーー人間のプライドが許さない「機械への敗北」ーー

2025年8月28日
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【記事概要】

生成AIが人間のプライドを揺さぶる瞬間が訪れつつあります。絵や音楽、文章、プログラミングまで、AIが人間の得意分野を侵食しはじめ、時にプロ以上の成果を出すことも珍しくありません。そのとき人間は「便利だ」と感じる一方で「自分はいらないのでは」と不安を抱き、誇りが傷つけられるのです。本稿では、近森満氏がポッドキャストで語った内容をもとに、AIが人間に与える心理的影響と競争社会に根付くマウント意識、そしてAIと共存するための「マインド・トランスフォーメーション」の重要性を論じます。DX推進や人材育成の観点からも、AIを敵ではなく増幅装置と捉えるべき時代に来ています。AIリテラシーを高め、自らの強みを活かしながら共生の道を探ることが、今後の社会とキャリアを切り開く鍵となるでしょう。

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【本文】

こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ 近森満です。
www.certpro.jp/blogs/dx_chikamori/
当社では「DX推進人材教育プログラム」として初回無料のコンサルティングを提供しています。DX推進や人材育成のご相談をお待ちしています。
www.certpro.jp/dxconsulting/


生成AIを許せなくなる日

近年、生成AIは驚異的な進化を遂げています。画像生成AIが指の本数を間違えて描いていたのはもう昔の話。今ではプロのイラストレーターすら驚くほどのクオリティで作品を生み出すようになりました。

音楽も、ロックやクラシック、リミックスからBGMまで、わずか数分で生成できる。文章に至っては、構成力や論理性を兼ね備え、一定水準以上の成果物を即座にアウトプットする。

その進化は「人間の得意分野」を脅かし始めています。作家、音楽家、プログラマー、営業担当…。人が誇りをかけて築いてきた専門性を、AIが平然と超えていく瞬間、人間は「便利」と同時に「屈辱」にも似た感情を抱くのです。

人間のプライドとマウント社会

なぜ「便利なはずのAI」が人間にとって時に「許せない存在」になるのか。
それは競争社会の本質と、人間の承認欲求に深く根差しています。

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スポーツの世界では常に「誰が一番か」が問われ、ビジネスの世界でも「成果を出した人」だけが評価される。そこでは自然とマウントの取り合いが生まれます。人間は「自分の能力が他人より優れている」ことを誇りにし、自己効力感を得てきました。

しかし、AIがその土俵に上がってくるとどうなるでしょうか。自分の得意領域で、しかも努力してきた分野で、あっさりとAIに追い抜かれる。この瞬間に「人間のプライドが許さない」という感情が生まれます。

事例: 営業職が変わった瞬間

コロナ禍を経て、営業の在り方も大きく変わりました。
かつては顧客のもとへ出向き、直接交渉するのが営業の本質でした。ところが「来ないでください」と言われた瞬間、オンライン営業やカスタマーサクセス型のスタイルが急速に広がりました。

今ではチャットボットやAIコールセンターが一次対応を担い、最後のクロージングだけ人間が行うケースも珍しくありません。

このとき営業担当者は「AIに自分の仕事を奪われるのではないか」という不安を抱きます。まさに「AIの台頭が人間の存在価値を突きつけた瞬間」なのです。

シンギュラリティと人類の分岐点

AIが人間の能力を超える「シンギュラリティ」。これは未来の話だと思われがちですが、すでに一部の分野では現実になりつつあります。

複雑な化学式や膨大なデータ解析をAIが突破し、人類の知識を拡張するようになりました。

これから登場するであろうASI(Artificial Super Intelligence)がそれにあたると言っていいでしょう。

「人間を超えた存在」としてのAIに直面したとき、多くの人は「自分の仕事はどうなるのか?」と考えます。これは自然な反応であり、同時に「マインドセットの転換」が必要になる場面でもあります。

マインド・トランスフォーメーションの必要性

AI時代を生き抜くためには、単なるスキルチェンジやリスキリングでは足りません。必要なのは「マインド・トランスフォーメーション」。

  1. マインドシフト:AIが得意な領域に仕事を任せ、人間は新しい領域を探す。

  2. マインドチェンジ:競争相手ではなく、AIを増幅装置として捉える。

  3. マインドトランスフォーメーション:AIと人間が協働する社会モデルを設計する。

この「マインド三姉妹」を経て初めて、人はAIと対等に共存できるのです。

事例: DXと教育現場の変化

学校教育や企業研修でも、AIの活用は広がっています。テストの採点やレポートの要約、さらに研修用教材の自動生成など、AIは裏方として力を発揮します。

ここで重要なのは「AIを導入すれば解決」ではないということ。AIを効果的に使える人材を育てる教育設計が欠かせません。つまり「教育不足」がDX推進を妨げる最大の要因なのです。

DX推進とAIリテラシー

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の真の目的は、単なるデジタル化ではありません。社会や組織の仕組みそのものを変革し、新しい価値を生み出すことです。

生成AIやAGI、さらにはASIといった超知性AIの時代において、人材に求められるのは「AIを敵視せず、活用する姿勢」。AIリテラシーを高め、自らの強みを活かしてAIと共創する人材こそが、これからの社会を牽引します。

まとめ:AIをライバルではなく相棒に

AIが人間のプライドを刺激するのは避けられません。しかし、競争ではなく共存を選ぶことが、持続可能な未来をつくる道です。

人間にしかできない「想像力」「共感力」「倫理観」と、AIの「圧倒的な処理能力」を掛け合わせれば、これまでにない価値が生まれます。

AIに敗北感を覚えるのではなく、AIを「自分を拡張するパートナー」として受け入れる。これが「生成AI時代を許せなくなる日」を「生成AIとともに進化する日」へと変える鍵なのです。

さいごに

いかがでしたでしょうか?
すこしでもみなさまの気づきになれたのであれば幸いです。

DX推進担当者の育成やIT教育研修でお悩みがあれば、ぜひ初回無料のコンサルティング「DX推進人材教育プログラム」にご応募ください。かならずお役に立ちます。
ではまた。


キーワードの解説

生成AI

生成AI(Generative AI)とは、大量のデータを学習したモデルが文章・画像・音楽・プログラムなどを自動生成する技術の総称です。従来のAIが「入力に基づいて判断や分類を行う」のに対し、生成AIは「新しいコンテンツを創り出す」点が特徴です。ChatGPTやMidjourneyなどが代表例で、企画書作成、イラスト制作、楽曲生成、プログラミング補助など、多岐にわたる分野で利用されています。一方で、著作権や倫理的課題、そして「人間の仕事を奪うのでは」という懸念も伴います。だからこそ、AIリテラシーを高め、効果的な使い方を身につけることが重要です。

マインド・トランスフォーメーション

マインド・トランスフォーメーションとは、AI時代を生き抜くために必要な心の変革を指します。段階は「マインドシフト」「マインドチェンジ」「マインドトランスフォーメーション」の三姉妹に整理され、AIを敵ではなく協働パートナーとして捉える発想が不可欠です。人間の役割は「AIに勝つこと」ではなく「AIとともに成果を高めること」へと変化します。DX推進や人材育成の場でも、このマインドセットを浸透させることが成功のカギになります。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)

DXとは、デジタル技術を活用して企業や社会の仕組みを変革し、新しい価値を創出する取り組みを意味します。単なるIT導入や業務効率化にとどまらず、ビジネスモデルや組織文化そのものを変革することが目的です。IoT・AI・クラウド・RPAといった技術を組み合わせ、社会課題の解決や新規事業創出につなげることが求められます。DXが進むことで、リモートワークの普及や営業スタイルの転換など、私たちの働き方・暮らし方も大きく変わっています。


【著者紹介】

近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ 代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
IoT検定制度委員会 事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
一般社団法人 IT職業能力支援機構 理事長(Android資格)
電気・電子系技術者育成協議会 副理事長(E検定)
NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会 メンバー(組込み)
ET教育フォーラム合同会社 代表(コンテンツ制作)
経済産業省地方版IoT推進ラボ ビジネス創出事業メンター(IoT支援)
経済産業省地域DX推進ラボ ビジネス創出事業メンター(DX支援)
デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
DX事業共同組合 設立理事(DX推進)
一般社団法人日本サステナブルビジネス機構 幹事(SDGs認証)
”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会 理事(DEI支援)
アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)
一般社団法人国際サイバーセキュリティ協会 事務局長(IACS認定)

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