
【記事概要】
今回のテーマは「音声革命」と「創造の罠」。GoogleのNotebookLMに搭載された音声機能の進化を背景に、AIが生成する高品質な音声コンテンツが誰でも簡単に作れる時代が到来しつつあることを紹介しています。特に、近森満自身がNotebookLMのキャラクターに名前を命名「ジェニファーさん」と「ジピタくん」を活用し、対話型での音声コンテンツ制作を実践している経験を語り、これまで煩雑だったシナリオ作成や音声編集が不要になることのインパクトを説明します。
一方で、このようなAI主導のコンテンツ生成がもたらす“創造性のパラドックス”についても指摘します。良質な情報が増えるほどに、どれを選べばよいのか分からなくなり、個人のプレゼンスが埋もれてしまう危険性があることを強調しています。特に「誰が言ったか」がますます重要になる時代において、自らの声で発信し続ける意義と、個性ある情報発信の必要性を説いています。
このエピソードは、AIの発展により可能になった音声配信の民主化と、それに伴う新たな競争のあり方、そして最終的には「人としての価値」をどう伝えていくかという問いを私たちに投げかける内容となっています。
【本文】
こんにちは、IT・DX教育サービスの株式会社サートプロ 近森満です。
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当社では「DX推進人材教育プログラム」として初回無料のコンサルティングを提供しています。DX推進や人材育成のご相談をお待ちしています。
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音声革命が到来した今、何が起きているのか
近年、生成AIの飛躍的な進化により、「音声コンテンツ」がいよいよ民主化されるフェーズに突入しました。特にGoogleがリリースした「NotebookLM」の音声機能は、まさにその象徴。これまで人間が何時間もかけて行っていたシナリオ作成や収録、編集といったプロセスが、AIによって一瞬で自動生成されるようになったのです。
私自身もこの技術を毎週実践しています。NotebookLMのキャラクターに命名「ジェニファーさん」と「ジピタくん」による対話形式の音声コンテンツを、週に1〜2回のペースで発信しています。その自然な会話の滑らかさや、シナリオ精度の高さには驚かされるばかりです。もはや「人が作った」と言っても過言ではないレベルの仕上がりなのです。
音声コンテンツ制作のハードルが下がった理由
ではなぜ、これほどまでに音声革命が叫ばれるようになったのか。その理由は大きく2つあります。
1)「良質なソースデータ」が誰でも扱えるようになったこと
たとえば業界団体や研究者がまとめたコンテンツをNotebookLMに読み込ませることで、非常に信頼性の高い知識をベースに音声を生成できます。これにより、情報の鮮度や正確性の課題をある程度回避できるようになりました。
2)「誰でも簡単に音声配信ができる技術」が整ったこと
これまで音声配信には収録環境や編集スキル、投稿プラットフォームの知識など多くのハードルがありました。しかし、今やSpotifyやYouTube Podcastなどを活用すれば、初心者でも手軽に発信できるようになっています。
事例: 教育コンテンツ制作にAI音声を導入
教育業界の動向として、これまでeラーニング教材を人間の講師によるナレーションで収録していました。しかし今では、スライドさえあればAIに高品質な教材を自動で作成することが可能となりました。雑音や言い間違いのない“よどみのない”ナレーションがワンクリックで手に入る時代になったのです。
創造の罠──良質なコンテンツがあふれる副作用
では、この音声革命の先にあるものは何か。私が危惧しているのは、「良質なコンテンツがありすぎる」という問題です。言ってみれば“情報の洪水”状態。NotebookLMが生成する音声は、まさに“滑らかで心地よい”。だからこそ、人は無意識にその言葉を信じてしまうのです。
かつては「誰が何を語るか」が重視されていました。しかし生成AIの普及により、言葉の「中身」は標準化され、伝える人の「個性」が埋もれやすくなってきています。これは「誰が語るか」が逆に問われる時代になっているとも言えるでしょう。
AIコンテンツに埋もれない「人の声」とプレゼンス
ここで重要になるのが、「個のプレゼンス」です。私はPodcastで1,700回以上音声配信を行ってきましたが、それは単にアウトプットしてきたということではなく、「近森満が語っている」という信用の蓄積でもあると考えています。
今やAIの話す内容の方が、ある種正確で信頼できるという認識すら生まれています。けれども、AIが語った内容には責任も背景もありません。「誰が語ったか」という意味では、AIよりも人間の声にこそ価値があるのです。
事例: 近森満のプレゼンス構築戦略
私は「近森満」という名前で、日々の音声配信、ブログ更新、SNS発信を継続しています。これによりインターネット上で検索すれば、「この人はDX・生成AI・教育支援の分野にいる専門家だ」と認識される状態を作っています。これは人間としての“存在証明”になりうる。
生成AI時代における新たな名刺とも言えるでしょう。
コンテンツ量産の時代に必要な戦略的マインド
「誰でも簡単に良質なコンテンツを作れる時代」だからこそ、何を伝えるかよりも「誰がどのように伝えるか」が重視されるようになります。そして最終的に問われるのは、人間としての信頼性、つまりE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)です。
あなた自身が何を発信し、どんなテーマで語る人なのか──これを明確にしなければ、いくらAIが優れたコンテンツを作っても、すぐに“その他大勢”に紛れてしまいます。つまり生成AI時代には、逆説的に「人間の個性」こそが最大の資産となるのです。
良質な音声時代を生き抜くために
私たちは、もはや「聞く前に信じる」「読む前に納得する」ような時代に突入しています。NotebookLMのようなツールがどれだけ便利であっても、受け手が情報の真贋を判断できなければ、“情報操作”されてしまうリスクすらあるのです。
だからこそ、今後の発信者に求められるのは「責任をもって語る力」そして「信頼される存在であること」。私たちは生成AIと共に生きるために、「あなたが語る意味は何か?」を常に自問し続ける必要があるのです。
事例: NotebookLMによるFAQ自動化
NotebookLMでは、ユーザーが提供した資料に基づいてFAQ音声を生成することも可能です。たとえば企業のサービス紹介動画に対して、顧客からよくある質問に音声で応答するコンテンツを自動生成する──そんな使い方も広がりを見せています。もちろん、正確性を担保するには一次ソースの設定が不可欠であり、ハルシネーション対策も必要です。
まとめ(企画書のネタ):音声時代における「誰が語るか」戦略
この音声革命は、AIによる大量生産の時代を切り開くと同時に、「個性と信頼が武器になる時代」をも到来させました。NotebookLMやその他生成AIを活用することは前提としつつも、最終的に「あなたの声で、あなたの想いを語れるか」が問われるのです。
プレゼンスを築くには時間がかかりますが、それこそが未来の差別化要因です。「AIが発信したコンテンツ」ではなく「あなたが発信した」という“証拠”を、今から積み重ねていきましょう。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
すこしでもみなさまの気づきになれたのであれば幸いです。
DX推進担当者の育成やIT教育研修でお悩みがあれば、ぜひ初回無料のコンサルティング「DX推進人材教育プログラム」にご応募ください。かならずお役に立ちます。
ではまた。
www.certpro.jp/dxconsulting/
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【音声配信】
※音声収録のポッドキャストではテキストには載っていない㊙話も。
ぜひ、ものは試しに聴いてみてください。
最近ビデオポッドキャストを始めましたので映像でもどうぞ!
【著者紹介】
近森 満(ちかもりみつる)
■株式会社サートプロ代表取締役CEO
IT技術者の教育支援と人材育成を専門とする事業化コンサルタントとして、2006年に株式会社サートプロを創業し、IoT検定、+DX認定、アジャイル検定などの資格制度を創出。独自の技術者向け教育研修の開発に定評があり、実践的なスキル向上を支援。経済産業省DX推進ラボおよびIoT推進ラボのメンターとして、自治体や中小企業のDX推進を支援。近年は超知性ASIスキル可視化にも取り組み、次世代技術の普及に注力している。
■所属・役職
・IoT検定制度委員会事務局長(IoT検定、+DX認定、超知性ASI検定)
・一般社団法人 IT職業能力支援機構理事長(Android資格)
・電気・電子系技術者育成協議会副理事長(E検定)
・NPO 組込みソフトウェア管理者技術者育成研究会メンバー(組込み)
・ET教育フォーラム合同会社代表(コンテンツ制作)
・経済産業省地方版IoT推進ラボビジネス創出事業メンター(IoT支援)
・経済産業省地域DX推進ラボビジネス創出事業メンター(DX支援)
・デジタル庁デジタル推進委員(デジタル化支援)
・DX事業共同組合設立理事(DX推進)
・一般社団法人サステナブルビジネス機構幹事(SDGs認証)
・”一億総活躍社会を実現する”共生日本協議会理事(DEI支援)
・アジャイル開発技術者検定試験コンソーシアム 事務局長(Agile検定)